誰もがデザインアプリを扱える現代、人を惹き付けるデザインとは?

抽象化とは何か
デザインをはじめ、表現活動は概ね抽象化の作業といえます。「抽象」と聞くと、あいまいなものという印象を持つかもしれませんが、本来の意味は、対象から重要で共通する部分を「抽出する」ことです。例えば、手足に対して頭が小さい彫刻作品、これは筋肉の躍動感を強調するために手足以外の部分を省く意図かもしれません。標識やサインなどで見かける「ピクトグラム」は伝えることを目的として抽象化が施されています。自動車を表現するなら多くの人が連想するボディとタイヤだけ残し、象であれば鼻が長く耳を大きく表現します。大事なのは「多くの人の最大公約数を取る」ことで、奇をてらった表現は伝える力を弱めることがあります。
抽象化によって記号が生まれる
抽象化によって「記号」として広まった形は、より強い力を持ちます。いまだに電話マークに黒電話が使われているのはその証拠でしょう。目に見えないものも、例えば瓶にドクロを描けば毒薬、パソコンでファイル削除はゴミ箱、検索は虫眼鏡といったように、手がかり的なモチーフを抽象化することで記号にできます。
ただし、これらの認識は文化や風習によっても異なります。日本ではゲームの決定ボタンは○、キャンセルは×ですが、アメリカ型は逆です。文化や慣習の違いも踏まえながら、相手に理解されるデザインを考える必要があります。
「気になる」は良いこと
最近は「人間くさい」デザインが好まれています。AIでより均整のとれた膨大な情報量のイラストレーションがシェアされるような今、逆にシンプルでどこかゆるい印象のものに人々が親近感を持つのも、自然なことかもしれません。
あえて写真の解像度を落としてみたり、完璧なバランスをどこか欠いたものが、温かみや愛着を生むデザインになっている例も見られます。線のはみ出しや形のゆがみといった不自然さは、ときには効果的な違和感として目を惹く力を持ちます。「何か気になる」のは良いことで、違和感をすべて排除すると「誰にも気にならない」デザインが生まれるかもしれません。
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