体の中で働く「バイオナノマシン」

体の中で働く生体分子機械
私たちの体の中は、想像以上に機械的な仕組みで動いています。例えば細胞内で物資を運ぶキネシンなどのモータータンパク質は、ATP(アデノシン三リン酸)を介して得られる化学エネルギーを運動エネルギーに変換して動く「生体分子機械」の代表例です。
生体内で働く分子機械のメカニズムや生体材料の特性について、有機化学や工学、薬学、医学といった分野横断的なアプローチで研究が進められています。これらを分子レベルで解明できれば、ドラッグデリバリーの開発や、バイオナノマシンを使った高効率な「ナノファクトリー」の構築など、さまざまな分野への応用が期待されます。
ナノデバイスで生体分子機械をコントロール
生体分子機械は規則的な機械的仕組みを持ち、その動作原理に外部刺激応答型の分子デバイスを導入することで人工的制御が可能です。ATPの化学エネルギーを変換して作動するミオシンでは、光応答分子により運動を誘導できることが試験管レベルで示され、同様の機構を持つキネシンでも光可逆的制御が報告されています。さらに細胞情報伝達に関わるGタンパク質Rasにも応用され、光だけでなくイオン応答デバイスによる制御も可能であり、ナノマシーンとしての応用が期待されます。
生体分子機械の仕組みを利用した医療への応用
生体分子機械は生命維持に必須の生理機能を担っています。その機能に障害が発生したり、生体内での生理的な制御ができないと病気になります。がん細胞では、有糸分裂に必要な紡錘体形成に関与するキネシンEg5が過剰発現し、増殖を促進しています。このEg5の機械的仕組みを特異的に阻害する機械的パーツになる分子は、抗がん剤として機能します。さらにEg5の仕組みに光可逆的に結合する化合物を用いた光スイッチ型抗がん剤の基礎研究が進んでおり、がん細胞を選択的に光らせる技術と組み合わせることで、副作用の少ない新規治療法の開発が期待されます。
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