病気の検査も自宅で簡単に! 「固定化」で広がる酵素の応用

酵素の「固定化」
一般的に化学合成では、化学物質を溶液中で反応させる方法が用いられています。しかし、ペプチドなどを合成する場合、反応させたい官能基以外での反応を防がねばならず、工程が複雑になります。そこで半世紀ほど前に開発されたのが、反応させる物質の片方を樹脂ビーズに固定させる方法です。反応させたくない官能基は固定して保護できるので反応効率が上がり、ビーズをろ過すれば生成物の回収も簡単にできます。
この方法と類似したものが「固定化酵素」です。酵素は機能性の高い優れた触媒ですが、タンパク質であるため変性しやすく、そのままでは産業利用に向いていません。ビーズに固定し、化学結合で酵素間に架橋もすることで、変性せず繰り返し利用できるようになります。
誰もが簡単にできる検査に
固定化酵素を、環境中の有害物質の分解やバイオマーカーの検出、化学合成の触媒などへ応用する研究が行われています。
現状では、病気などの指標となるバイオマーカーの検出は、専門の機関で行わなければならない場合がほとんどです。しかし固定化酵素を使えば、インフルエンザやコロナウイルスの検査のように、低価格の市販の検査キットで誰でも簡単に高精度な検査ができるようになるでしょう。実際に固定化酵素を検出に利用する一例として、体内に残った薬の濃度を検出する方法が開発されています。
高性能なPEGへの固定
酵素を固定する樹脂の種類は、固定化酵素の性能に影響します。ポリエチレングリコール(PEG)に固定した酵素は、一般的に使われている樹脂のものより、繰り返し利用の回数や酵素活性の高さが優れていることがわかりました。タンパク質が立体構造を維持するためには水分子の存在が必要であるため、PEGの保水性の高さがそれに役立っていると考えられます。ただし、詳しいメカニズムはわかっていないため、酵素と樹脂の関係など、固定化酵素の基礎的な性質を明らかにして、より広い分野への応用につなげることが期待されています。
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