省エネ社会を支える「魔法の材料」 次世代の薄膜技術が未来を変える

最先端の半導体、お菓子の袋にも活躍
有用な機能を持つ材料を薄くコーティングする「薄膜(はくまく)技術」は、日用品から最先端の半導体まで幅広く活用されています。例えば、お菓子の袋の銀色の裏地も「アルミ蒸着」という薄膜技術の一種です。近年、この膜を作る手法として「スパッタリング」という技術が主流になっています。
スパッタリングとは、もともと「撥(は)ね飛ばす」という意味です。ガスに電圧をかけてプラズマ状態をつくり、発生したイオンを材料(ターゲット)に激しく衝突させて、材料の微粒子を勢いよく叩き出します。その微粒子が霧のように飛散し、基板の表面に整然と吸着することで、髪の毛の約1000分の1(0.01〜0.3μm)という極めて薄く、剥がれにくい膜が形成されるのです。
世界を変える「変身材料」
現在、次世代の薄膜材料として注目を浴びているのが二酸化バナジウム(VO2)です。この材料は、約68℃を境に、電気を通さない「絶縁体」から電気を通す「金属」へと、まるで魔法のようにその性質をガラリと変えるとても面白い性質を持っています。約68℃で電気や光を通す性質が劇的に変化します。
VO2が拓く省エネ技術
次世代の省エネ社会を支える「魔法の材料」として期待されているのが、VO2です。この材料の凄さは、温度によって電気や光を通す性質が劇的に変わる「相転移」という現象にあります。例えば、この薄膜を窓に使うと、暑い時には赤外線をブロックし、寒い時には熱を取り入れる「スマートウィンドウ」になり、電気を使わずに室温を自動調節してくれます。さらに驚くべきは、人間の脳の仕組みを再現する「ニューロコンピューティング」への応用です。脳細胞が情報を伝える時の「発火」という動きは、VO2が瞬時に電気を通す現象とそっくりです。この仕組みを利用した次世代の半導体は、従来のコンピュータに比べて圧倒的に少ない電力で動くため、AI普及による電力不足を解決する画期的な技術として、世界中で研究が加速しています。
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