スマホにも入ってます! 原子を並べて作る極々薄い膜

ナノメートル厚さの薄い膜が大活躍
「薄膜(はくまく)」とは、厚さが1000分の1ミリ以下の非常に薄い膜のことです。その応用分野は幅広く、スマホのICチップから、摩耗を低減する硬いコーティング、燃料電池の電解質や医療用インプラントなど、さまざまな産業分野で使われています。 その素材としては、例えば同じチタン系材料でも、チタンだけなら医療器具、窒化チタンにすれば硬質なセラミック材料、酸化チタンにすれば光触媒など、いくつもの用途があります。これら材料の機能を生かしながら、実用可能な低コストで薄膜を作る技術が開発されています。
プラズマを使って薄膜を作る
薄膜を作る技術の一つに、材料を加熱して気体になった原子を基板に堆積させる「蒸着」がありますが、気化する温度が高い材料ではコストもかかります。これに対して加熱せずに薄膜を作る方法が、プラズマを使った「スパッタリング」です。例えばチタンが材料なら、プラズマ状態にしたアルゴンなどの希ガスをチタンの円板に衝突させてチタンの原子をはじき出し、基板に降り積もらせて薄膜を作るという技術です。プラズマとは気体の原子が電子とイオンに電離した状態のことで、空間中に存在する電子を気体の原子に当てると、低温での電離が可能です。こうした現象を利用すれば、チタンの円板にマイナスの電圧をかけるだけで、斥力(せきりょく)を受けた電子がアルゴンにぶつかってプラズマ状態を作り、イオン化したアルゴン原子はマイナスに引っ張られて円板に衝突し、チタン原子が飛び出すという一連の動きを引き起こすことができます。
原子をきれいに並べるには
スパッタリングで重要なのは、基板に原子がきれいに並んだ結晶を作ることです。原子に熱エネルギーを与えると自由に動いてひとりでに安定な結晶状態に落ち着きますが、基板材料の融点が低い場合は使えません。そこで円板から飛び出したチタン原子をイオン化して、基板に電圧をかけて引っ張ることでエネルギーを与える方法が研究されています。
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東京都立大学 システムデザイン学部 機械システム工学科 准教授 清水 徹英 先生
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薄膜工学、プラズマ工学先生が目指すSDGs
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