脳の働きと筋肉の痛みの「深~い」関係

いつまでも続く痛み
「慢性疼痛(とうつう)」とは、治療によってけがや病気が治っているはずなのに、痛みが3カ月以上続く状態のことです。例えば部活で捻挫して、1週間ほどで腫れもおさまり、レントゲンでも異常はないのに、いつまでも痛みを感じるような場合です。従来は靭帯(じんたい)や骨、関節などの異常だと考えられていましたが、近年は脳の働きの変化が慢性疼痛の原因だという見方が主流になっています。痛みを認知するのは脳であり、脳機能の変調が「まだ痛い」と誤認識させるという説です。
脳がブレーキをかける
リハビリの臨床現場では、身体機能は回復しているのに動かない、あるいは痛みのために動けないと患者が感じるケースがあります。慢性疼痛患者と健常者の脳機能の働きを比べてみたところ、両者で筋活動のパターンが異なることがわかりました。その違いは、脳から筋肉への指令がどのように出されているか、また抑制などの指令がなされているかが鍵になっています。筋肉は動けるにもかかわらず、脳が筋肉にブレーキをかける場合があるのです。
スポーツでけがをすると、脳の活動が収縮することがわかっています。けがをしたときの痛みの経験や恐怖心など心理的要因も加わり、脳から筋肉に動きを抑制する命令が出ると、本人は動けず、痛みがあると感じてしまいます。痛みは主観的な症状であり、本人が「痛い」といえば痛みが存在する、つまり脳が感じるものなのです。
VRを使ってリハビリ
この現象を逆手にとり、VR(仮想現実)や動画を用いたリハビリが試されています。VRで正しい動きを脳に感じさせたり、上手な人の動画を見せたりすることで、脳がその動きをまねするよう、筋肉に指令するようになります。筋肉を動かす司令塔の脳が誤った認知をすると、動きの制限や痛みにつながりますが、逆に正しい動きを学習すれば、可動域が広がり、痛みを感じなくなるのです。
脳と筋肉の関連性を解明し、治療やリハビリに役立てることが、慢性疼痛の改善にもつながっていくと考えられます。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
