目に見えない不安にどう向き合う? 原子力災害と診療放射線技師

東日本大震災が教えてくれた「心の課題」
2011年の東日本大震災では、福島第一原子力発電所の事故により、多くの住民が放射線への強い不安を抱えました。現場に派遣された診療放射線技師は、放射線量を測るだけでなく、避難所で住民の不安な声に耳を傾ける役割も担いました。「原子力災害医療体制」は震災後に整備が進みましたが、多くは原発がある地域に限られています。東京都など大都市を含むそのほかの地域では、いまだ十分な体制が整っていません。原子力災害時には全国からの応援が必要になるからこそ、どこにいても学べる機会をつくることが課題でした。
「知識」を「安心」に変える難しさ
そこで、診療放射線技師を対象としたオンライン研修の教材を整備する取り組みが進んでいます。受講した59人の効果を測定すると、テストの正答率が受講後に3割近く向上し、オンラインでも十分な教育効果があると示されました。一方で、原子力災害では放射線に関する知識があるだけでは不十分な状況もあります。診療放射線技師が通常業務で扱う医療被ばくは「診療のため」と納得できても、原子力災害による被ばくは恐ろしいものです。たとえ科学的に問題ない数値であっても、単に「大丈夫です」と伝えるだけでは、住民の信頼は得られません。大切なのは、相手の不安を否定せず、納得してもらえるまで対話を続ける力なのです。
「RoPe」がめざすコミュニケーション
この課題に挑むため、放射線の健康影響に関する環境省の研究調査事業として、2024年に始動したのが「RoPeプロジェクト」です。診療放射線技師と公認心理師が協働し、放射線災害時に住民を支援する仕組みをつくる取り組みです。診療放射線技師が専門知識を、公認心理師が心のケアを担い、避難所などで住民の不安に寄り添いながらリスクコミュニケーションを行います。相手の感情に向き合い、座る位置や視線の向け方まで、ワークショップなどを通じて学びます。関連する職能団体とも連携し、原子力災害に備えた継続的な人材育成が始まっています。
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駒澤大学 医療健康科学部 診療放射線技術科学科 准教授 新井 知大 先生
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