分子が情報を記録する? フォトクロミック分子が開く未来

分子が情報を記録する? フォトクロミック分子が開く未来

光で色が変わるフォトクロミック分子

「調光サングラス」は、外に出て強い光を浴びると色がつき、室内では無色に戻る便利なサングラスです。これは「フォトクロミック分子」の性質を利用したものです。この分子は、特定の波長の光を当てると構造が変わって色がつき、別の波長の光を当てると元の構造に戻って色が消えるという特徴があります。分子1つは数ナノメートルほどの小ささで、光によって構造が変わる性質を生かして、さまざまな分野での活用が期待されています。

分子が記録材料に

フォトクロミック分子の中には、色がついた状態を長く保てず、自然に元の無色に戻ってしまうものがあります。調光サングラスが室内で無色に戻るのは、その性質を利用しているためです。一方、フォトクロミック分子の中でも「ジアリールエテン分子」は、どちらの状態でも、特定の光が当たらない限り安定してその状態を保つ特徴があります。いわば光をスイッチとして2つの状態を行き来できるわけです。この特徴を生かせば、分子1つが0か1を表す役割を果たし、情報の記録材料として使える可能性があります。

図書館すべての情報が持ち運べる?

分子を情報の記録媒体として扱えるようになれば、データ保存のあり方が大きく変わるかもしれません。もし実現すれば、計算上1センチ角のキューブに、アメリカの国会図書館にあるすべての書物の情報が収まるほどの記憶容量になります。量子コンピュータのように大容量のデータを扱う時代に、データ保存を支える技術の一つになる可能性があります。また個人ユースでも、スマートフォンやパソコンの記憶容量を気にせず、大量の情報を持ち運べる時代が来るかもしれません。
ただし、実用化には課題もあります。化学の力で分子そのものの耐久性や反応速度を高めることが必要です。さらに、物理学など他分野と連携しながら、分子1つずつにアクセスする技術も必要になります。

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先生情報 / 大学情報

熊本大学 工学部 材料・応用化学科 教授 深港 豪 先生

熊本大学 工学部 材料・応用化学科 教授 深港 豪 先生

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フォトクロミズム、ナノ材料科学

メッセージ

今はSNSを通じてさまざまな情報に触れることができます。しかし、流れてくる情報を眺めるだけで終わらせず、面白いと感じたことは実際に自分で体験してみましょう。研究の世界では、予想外のことが起きた瞬間にこそ、大きな発見が潜んでいるものです。そうした気づきは、日頃からいろいろなことに関心を持ち、視野を広げておくことで深まっていきます。どんな経験も無駄にはなりません。「うまくいかなかった」という結果も、次につながる大切な一歩です。恐れずにチャレンジしてください。

熊本大学に関心を持ったあなたは

熊本大学は、「総合大学として、知の創造、継承、発展に努め、知的、道徳的、及び応用的能力を備えた人材を育成することにより、地域と国際社会に貢献する」という理念に基づき、地域のリーダーとしての役目を果たしています。かつ、世界に向け様々な情報を発信しながら、世界の学術研究拠点、グローバルなアカデミックハブとして、その存在感を高める努力をし、教育においては、累計30件にも及ぶ「特色ある教育プログラム」が優れた取り組みとして文部科学省から認定され、その教育力の高さと質の高い教育内容は定評のあるところです。