「障害×ジェンダー問題」を統計から解決する

取り残された社会課題
社会福祉ではこれまで、障害者問題とジェンダー問題は別々の領域で語られてきました。障害者に対する個別の支援が重要と言われる中でも、「障害者」と一括りにしたとらえ方で、そこには男性もいれば女性もいて、いろいろな年齢層の人がいるといった視点はありませんでした。そのため、障害のある女性特有の困りごとなど、「障害者」「女性」それぞれの領域の属性が交差するところにある課題は、社会の中で見えない状態で取り残されていたのです。
統計が明らかにする生活実態
社会福祉の研究では、当事者の声を集めて課題を分析する方法もありますが、声を上げられない人にはそもそもアクセスできないという限界があります。そのため、社会の中で誰がどのように取り残されているか、背景にある課題や解決の可能性を、「統計」から読み解くという研究が行われています。
統計ではデータを取る中で性別や年齢などが分類されるため、複数の属性の交差する場合の特徴に光が当たり、見えにくいとされてきたさまざまな経験を映し出すことがあります。例えば、「障害のある女性が災害時の避難所で抱えるニーズ」といった視点でデータが整理されると、避難生活の暮らしぶりと共に具体的な課題が浮かび上がり、適切な支援につなげることができます。
「数字」は変えられる
統計は数字なので冷たい印象を持つかもしれませんが、統計分析を通して、背後にある暮らしやニーズに関する「声」が浮かび上がってきます。例えば、家族と同居している障害者が多い中で、実は自立したいという意欲を持つ人が多いことも調査から読み取ることができ、自立を妨げている社会環境の課題も見えてきます。「障害のある人をこんなふうに支援すれば、数字が変わるかもしれない」と議論につなげていくのが統計調査の本来のあり方です。統計で表れている数字に対して受け身になるのではなく、社会で当たり前とされている光景を見つめ直す道具にしていくことが大切なのです。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報

日本大学 文理学部 社会福祉学科 教授 吉田 仁美 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
社会福祉学先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?