なぜ自分は大切なのか? ―病気や老いから見える世界―

「自分はいてもよい存在なのか」
高齢者や病気を抱えた人を支える福祉の現場では、身体の痛みや生活の困難だけでなく、「生きている意味が見出せない」という苦しみが語られることがあります。働けなくなり、家族の役に立てなくなったと感じる中で、「家族に迷惑をかける自分はいてもよい存在なのか」という辛さにぶつかるのです。こうした人間の根源的な苦しみは「スピリチュアルペイン」と呼ばれています。人を支える上で、身体的、精神的、社会的な側面に加え、スピリチュアルな面を含めた全人的な存在として、人が抱える辛さを知ることが必要です。
苦しみはどこから生まれている?
それでは「自分はいてもよい存在なのか」という苦しみはいったいどこから生まれているのでしょうか? 私たちの社会は、新しい技術や製品が生み出す生活の向上を求め、生産性やコスパ・タイパの向上に急がされて、目に見える幸せを追い求めています。その中で、私たち自身も自分の価値を高めるため、そして、誰かに認められ選ばれるために、大学に入学できたら就職して、就職できたら人脈を広げ、スキルを高めて出世して、出世したら家と車を持ってと自分の活動や所有物を獲得していくことを生きる動機、そして自分という存在の証明にしています。
病気や老いと生きることから見える世界
精神科医のエリザベス・キューブラー・ロスは多くの患者をケアし看取ってきた人でした。しかし、自分が脳卒中で倒れ、左半身が不随になったとき、「受け取ること」「ありがとうということ」「自分を明け渡すこと」を学ぶことが人生のレッスンだと言いました。病気になって障害を持ったり、老いていくことは能力や行動の世界では失っていくことです。しかし、失うことで、私たちは自分の価値を自分で証明することを明け渡し、自分の価値は存在そのものにあることを受け取りなおしていくことがあります。高齢者や病気を抱えた人を支える福祉を学ぶことは、いのちとは何かを知り、いのちの尊厳を問い直し、自分と他者のいのちを尊重することにつながっています。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
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