病院がない過疎地域で、必要な医療につながるには?

医療に関わる「困りごと」を一緒に考える
医療ソーシャルワーカーは、入院中もしくは外来の患者の住環境、社会環境、人生に着目しながら寄り添い、困りごとの解決を一緒にめざします。例えば高齢者が1人で受診しなければならない場合に、広い院内で受付から検査室、診察室などの移動が難しいことがあります。事前にその状況がわかれば、医療ソーシャルワーカーが院内調整を行い、その時間帯に付き添いの看護師を配置するなど、患者が受療しやすい環境を整備することも大切な役割です。
病院から自宅に戻れない
全国の市町村の半数にも及ぶ過疎地域では、医療機関まで片道2時間かかったり、月1回程度の訪問診療はあっても急な往診には対応できなかったりと、医療につながり続けることが難しい状況にあります。都市部の病院で働く医療ソーシャルワーカーへの調査では、過疎地域の入院患者から退院して家に戻りたいと言われた場合、多くはそのまま病院で最後まで過ごすよう提案していることがわかりました。理由は、患者の住む地域の医療資源が把握できていないために、退院の判断が困難だからです。そのため、都市部の病院が、行政などを通して過疎地域の医療体制や人的資源の把握をしていくことで、退院の可能性は広がると考えられます。
長く自宅で暮らし続けるために
「退院して自宅のお風呂に入りたい」「家族が在宅でみとりをしたい」など、医療を受け続けながら、住み慣れた自宅で過ごしたいというニーズが多いのは、過疎地域も同じです。そのような中で、在宅医療の医師・看護師だけでなく、住民同士の支え合いなど、ほかのサービスでは補えない人的ケアとの連携で、地域が最後まで患者の希望をかなえられる場所になる可能性はあります。また、過疎地域でもICT技術を活用した医療の展開が必要な状況になっているため、今後は例えばオンライン診療における医療ソーシャルワーカーの関わりなども考えていく必要があるでしょう。
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