ゲノムで読み解く、過去・現在・未来

遺伝子で病気を見抜く
糖尿病も、生活習慣が関わるタイプだけでなく、遺伝によって発症するタイプがあります。「若年発症成人型糖尿病(MODY)」と呼ばれる疾患で、原因となる遺伝子を持つ場合、極めて高い確率で若年期に発症します。現在、患者のDNAを解析して原因遺伝子を特定し、診断や治療に役立てる研究が行われています。さらに、原因遺伝子がまだ見つかっていない患者を対象とした新たな原因遺伝子の探索や、AIを活用した診断支援システムの開発も進められています。
病気を診断するだけでなく、その人が将来どのような病気になりやすいかを予測し、予防につなげる研究も始まっています。
ゲノム検査が予防医療を変える
DNAの遺伝情報であるゲノムは、生涯変わることがありません。この特徴を生かし、ゲノム検査を人間ドックに取り入れ、健康診断データとAIを組み合わせて将来の疾患リスクを予測する研究が進められています。海外では、ゲノム情報を活用することで通常より早い段階でリスクに対応できることが報告されており、すでに国家規模で導入を進める国もあります。
こうした医療への応用を支えているのが、ゲノムが持つ多様性を理解する研究です。実は、その多様性は古代人のDNAからも読み解くことができます。
古代人のゲノムに刻まれた歴史
臓器移植の適合性を決める重要な因子として知られるHLA遺伝子は、人によって型が大きく異なり、病気へのかかりやすさにも関係しています。縄文人の骨からDNAを解析したところ、当時多かったHLA遺伝子の型は現代の日本人にはほとんど残っていないことがわかりました。その背景には、農耕の広がりとともに結核などの感染症が広まり、時代とともにHLAの構成が変化した可能性があります。
ゲノムは、過去の人類の歴史を読み解くだけでなく、現在の病気を診断し、未来の健康を守ることにもつながる研究分野なのです。
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