押さえつけて歯磨きは暴行罪? 法律の判断基準を考える

しつけのつもりが暴行罪に?
誰かを押さえつけると、刑法の暴行罪に当たる可能性があります。では子どもが歯磨きを嫌がったときに、親が押さえつけて歯を磨くのは暴行罪に当たるでしょうか。
刑法は、犯罪となる行為と処罰を定めた法律です。親の行為でいえば、子を押さえつけて歯を磨くことは暴行罪、子のゲーム機を捨てることは器物損壊罪の「構成要件(犯罪が成立するための要件)」に該当する可能性があります。一方で、刑法35条には、犯罪の構成要件にあてはまる行為でも他の法律で許される場合には違法でないことが定められています。親には民法820条で「監護・教育」の権利と義務が規定されており、親権の行使として正当化されれば違法にはなりません。しかしどこまでが親権の行使として許容されるのかは議論が必要です。
体罰を禁止する法改正
平成20年ごろまでは、親の体罰は「懲戒権」の行使として一定程度許容されていました。しかし平成末期にしつけを口実とした虐待死事件が続けて起きたため、令和元年に体罰を禁止する法改正が行われました。体罰に厳しい風潮の中、5歳の子どもの頬をつまんだ父親を暴行罪で有罪とするなど厳格な態度を示す裁判例も出ています。しかし処罰が厳しすぎるとかえって子の不利益になる場合もあり、社会常識が変化していく中で、親権の行使を判断する新しい基準の模索が必要です。
法律の解釈と基準は
法律には起こり得るあらゆるケースを書き込むことはできず、判断基準も記されていません。法律を解釈し、基準を導き出すことが重要です。
親権の行使に関しても、例えば暴行罪といえそうな行為でも軽いものであれば処罰に値しない(可罰的違法性がない)と考えられます。これは、友達の肩をポンとたたいても暴行罪にならないのと同じです。そして押さえつけて歯を磨く行為については、自由を奪われる不利益と、「将来虫歯にならない」利益とを比較して、利益が上回るため違法ではないと考えられます。法律を適切に運用するために、こうした判断基準が議論されているのです。
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