商品の値段はだれが決めるか―価格に隠されたマーケティングの論理

値段は「価値」で決まる
同じエスプレッソでも、チェーン店では300円、銀座のカフェでは1,000円で販売されています。コーヒー豆のコストだけで値段が決まるのであれば、この差は生まれません。マーケティングでは、価格とは「消費者がその商品に感じる価値」を映し出すものだと考えられています。消費者は、「それだけ払う価値がある」と感じれば、高い価格でも購入します。逆に、どれだけコストをかけた商品であっても価値を感じなければ買いません。値段は、商品と消費者をつなぐ「価値の表現」なのです。
動かす値段:ダイナミックプライシング
飛行機の座席は、3週間前であれば3万円、出発直前には8万円になることがあります。同じ席であるにもかかわらず、なぜ価格が変わるのでしょうか。航空会社は将来の需要を完全には予測できません。そのため、早い段階では価格を安くして需要を確保し、席が埋まるにつれて価格を引き上げていきます。残り少ない席には、高い金額を払ってでも利用したい人が現れるためです。これを「ダイナミックプライシング」といいます。ホテルやテーマパークでも用いられているこの仕組みは、デジタル技術によってリアルタイムで需要分析や価格変更が可能になったことで、急速に普及しました。値段は「いつ買うか」でも左右されるのです。
動かさない値段:EDLP
一方で、セールをほとんど行わず、「365日ずっと低価格」を貫く戦略もあります。これを「EDLP(エブリデイ・ロー・プライス)」といいます。業務スーパーやニトリ、イケアなどがこの方針を採用しています。なぜこの戦略が強いのでしょうか。セールがない場合、消費者は「安くなるまで待つ」という行動を取りません。その結果、売上が特定の時期に集中せず、在庫管理や仕入れを効率化できます。価格を安定させることで、裏側では「在庫回転率」を高め、コスト削減にもつながります。
このように、値段の決め方は表向きの販売戦略であると同時に、経営全体を動かす仕組みでもあるのです。
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目白大学 経営学部 経営学科 教授 岩永 洋平 先生
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