企業経営における情報化の急速な進展や富の集中、地域間の不平等、高齢化と社会保障費の増大、未知のウィルスによるパンデミックなど、現代社会では様々な課題が新たに発生しており、これらの課題の状況は刻一刻と変化を続けています。
一橋大学では、社会で蓄積されるデータを用いて、ビジネスの革新と社会課題の解決に対する方策を提案・実行できる人材を育成するために、ソーシャル・データサイエンス学部(仮称)の設置を計画しています。同学部では、本学が伝統的に強みを持つ社会科学と数理・統計教育に基づくデータサイエンスを融合させた、新たな学びを展開します。
本学の商学部・経済学部・法学部・社会学部でも、それぞれの学問分野に相応しいデータ分析の技術を学ぶことができる科目が複数あります。しかし、新学部では、より汎用性の高い理系的なデータサイエンスの技術と、それらを活用する上での倫理的・法的な問題などについて、より体系的に学ぶことができます。また、社会科学とデータサイエンスの知識の融合により、ビジネスの革新や社会課題の解決にあたって、まずはデータに基づいて思考するという「データ駆動型」アプローチを学べることも、新学部の特徴です。
ビジネスの革新と社会課題の解決に対する方策を提案・実行できる人材を育成するため、新学部では、「ビジネス」「社会課題」「データサイエンス」という3種類の領域を、すべて体系的に修得するカリキュラムを設定しています。また、それらの体系的な知識を融合させるため、最先端のビジネス革新や社会課題解決に取り組むための演習科目を豊富に提供します。
「PBL(Project Based Learning)演習」(3年次必修)は、民間企業や政策機関などから実際の経営課題や政策遂行における社会課題とそれらを解決するためのデータの提供を受け、少人数での演習を通して、解決法を検討し提案していく実践的な科目です。また、教員と少人数の学生による「ゼミナール」(3-4年次必修)では、濃密な議論を通じた深い学びを得るとともに、各自の問題意識による独自のテーマを設定
して学士論文を執筆します。
社会科学とデータサイエンスを融合した知識を有する本学部の卒業生は、IT企業や製造業などでは、データ分析基盤の開発や、データ分析・情報技術の活用により流通や販売を管轄することのできる経営幹部の候補として、政策機関やシンクタンク、商社などでは、データ分析・調査研究・戦略策定業務などを遂行できる経営幹部の候補として社会に貢献します。また、一部の卒業生は、ソーシャル・データサイエンスのより高度な知識を身に付けた、高度専門職業人材や研究人材として活躍するため、大学院に進学することが見込まれます。