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未来に必要不可欠な化学反応の高速開発をめざす
北海道大学 化学反応創成研究拠点（WPI-ICReDD）は、2018年10月に「計算科学」「情報科学」「実験科学」の3分野を融合させることにより、新しい化学反応の深い理解と効率的な開発をめざし設立されました。
化学反応は自然界のあらゆるところに存在しており、その制御は人類を豊かにする根幹をなす技術となります。WPI-ICReDDでは、化学反応の発見や設計を単なる偶然や科学者の経験による直感に頼るのではなく、意図的に制御することをめざしています。実際には、量子化学計算に基づく最先端の反応経路自動探索法により化学反応経路ネットワークを算出したあと、情報科学の概念を応用し実験に必要な情報を抽出することで、最適な実験条件を絞り込むことが可能となります。また、実験科学のデータを情報科学を通じて計算科学へとフィードバックすることで新しい反応を合理的かつ効率よく開発できるようになります。
また、「化学反応創成学」という新たな学問領域を確立し、今後人類が必要とする新しい化学反応や材料の創出にも取り組んでいます。
新しい技術と材料の開発 それらの活用をめざした研究
すべての物質は原子の集合体ですが、原子を自由に組み合わせることで、医薬品なども簡単に作れると思うかもしれません。しかし、原子の複雑な挙動を予測することは非常に困難であり、実験だけではすべての反応経路を網羅することはできません。そこで、化学反応の経路を人が考えられる範囲を超え自動探索できる人工力誘起反応（AFIR）法と呼ばれる計算法を開発し、未知の「原子の動きの全貌」の予測を可能にしました。AFIR法はそのアルゴリズムが非常に単純であるため、広範な種類の化学反応へと適用することができます。既に、有機合成反応、光反応、微粒子触媒、固体触媒、相転移反応など、さまざまな反応へと応用できることが実証されています。また、速度と精度を両立するためにニューラルネットワークを用いた方法も開発しています。
「新しい技術」抗がん剤開発の新ツール
分化したがん細胞を「ダブルネットワークハイドロゲル」で培養することで、がん幹細胞に逆戻りすることを発見。これにより薬剤を簡単に評価することができるようになりました。がんの再発を減少できる可能性があります。
拠点長から高校生に向けたメッセージ
研究の面白さは、難しく思える課題に対して、工夫を凝らしながら１つずつ解決していく過程にあります。研究者への道のりは、その時々の運や、周囲の先生方の導きに助けられることもあります。分野の異なる人たちがコミュニケーションを取り、互いに得られる新たな視点で課題解決に挑むのがWPI-ICReDDの基本理念です。皆さんも異なる分野へも視野を広げる気持ちで勉強を続けてみてください。化学反応は人類を豊かにする鍵です。10年後、新たな化学反応の開発に共に携わりましょう。
