近年、情報通信技術の進展によって、社会の様々な分野でビッグデータと言われる多種多様で膨大な量のデータが集積され、その活用による付加価値の創出が大きな課題となっています。このような社会的要請に応えるため、データサイエンスに焦点を合わせた日本初の本格的な学部を平成29年4月に設置しました。本学部では、データサイエンスの専門知識やスキルといった理系的基礎の上に、データ利活用の現場で相互補完的な専門性を有する仲間とコミュニケーションを図りながら、データから価値のある情報を取り出し、それを意思決定に活かす能力を備えた文理融合型の人材を育成します。
本学のデータサイエンス学部の教育課程では、統計や情報の基礎力を身に付けるだけでなく、実際にデータの解析結果を意思決定に活かして、価値創造できる力を高めることを目的としています。このような目的を達成するため、1,2年次には統計学と情報工学の基礎的内容を身に付け、様々な応用分野におけるデータ分析の実例を学びます。それらの基礎をもとに、3,4年次では各種領域科学におけるデータ分析手法を学び、実際のデータを使った演習を通して価値創造の実践経験を積み重ねていきます。それに加え、各自の興味に応じ、様々な統計手法の数理的内容をより深く学んだり、より高度な情報処理技術を身に付けたり、より多くの分野における問題解決スキルを磨いたりできるカリキュラムを用意しています。
データを管理、加工、処理、分析をするためのスキルは情報や統計のスキルなので理系的ですが、分析結果を価値創造に活かすためには、データの背景を十分に知る必要があり、多くの場合、文系的要素が必要となります。本学部のカリキュラムでは、情報、統計関連科目ばかりではなく、経済、経営等の文系の授業も開講されます。また、ビジネス分野の第一線で活躍をしている方々の話を多く聞くことができる授業もあり、幅広いスキルを身に付けることができます。なお、統計学の基礎である数学については、高校で数学Ⅱ・Bまでしか学習しなかった学生でも対応できるよう、数学Ⅲの内容から学習します。
本学部で実施されるカリキュラムは、データサイエンス科目(データエンジニアリング系(情報関連)科目、データアナリシス系(統計系)科目)と価値創造科目(経済、経営系科目、多分野における価値創造の実例紹介、価値創造の実践等)の2つに大きく分けられています。これらの授業から自分の興味に応じた授業を受講することで、情報のエキスパート、統計のエキスパートになることも可能です。
Society5.0時代を主体的に生き、社会の発展に創造的に参加する能力を身に付けるために、滋賀大学では「滋賀大学数理・データサイエンス・AI教育プログラム」を取り入れ、教育学部、経済学部へもデータサイエンス教育を展開しています。このプログラムは数理・データサイエンス・AIに関する知識及び技術について体系的な教育を行うプログラムのなかでも、特に先導的で独自の工夫・特色を有するものとして、全国的にも数少ない「リテラシーレベル(プラス)」として文部科学大臣から認定されています。
令和2年度から全学部の学生を対象に実施している同プログラムは、数理・データサイエンス・AIの基礎的な能力を養うことが目的。所属学部により2科目のうち1科目を履修する仕組みで、「データサイエンス入門」ではデータの「収集・加工・処理」「分析」「分析結果の解釈とその活用」の3要素を、「データサイエンス・AIへの招待」ではデータサイエンスの重要性やカリキュラムの全体像、基礎知識や学習方法などを学びます。データサイエンス教育のパイオニアとして、その実践を推進しています。