その「悩み」があなたを成長させる

悩みがあってこその高校生
「アイデンティティ」で知られる発達心理学者・精神分析家のエリクソンは、人生を8つの段階に分け、それぞれの段階で生じる悩みや葛藤、課題を考察しました。そのうち、高校生を含む青年期は第5段階にあたり、自分自身に関する悩みが最も生じやすい時期です。
青年期特有の悩みは、「自分らしさとは何か」「自分はどのように生きていくのか」といったテーマが中心です。この時期に悩みながらも行動することは、自分自身の中核(アイデンティティ)を形成していくうえで重要な経験です。青年期の悩みは成長に必要なものであり、悩んでいる自分を肯定的に捉えることが大切です。
解決への一歩を見つける心理療法
心理療法の一つに、悩みが解決した状態をイメージし、望ましい状態へ近づくことを支援する「ソリューション・フォーカスト・アプローチ(解決志向アプローチ)」があります。これは、悩みそのものや原因を探るのではなく、現在その人が持つ力や資源を引き出すことに焦点を当てます。
例えば、不登校の問題で原因ばかりに注目すると、「誰が悪い」という責任追及で終わってしまいがちですが、実際には原因が複雑に絡み合っており、単純ではありません。
この心理療法では、本人に「どうしたいのか」を問いかけ、将来に向けて「今できていること」に気づき、それを踏まえて「今できること」を考え、実際の行動へとつなげていきます。
小さな一歩が将来につながる!
普段していることを「できていること」と捉えることが、変化への第一歩です。また、大きな目標ではなく、1日10個の英単語を覚えるなど、スモールステップで達成できる目標を立てましょう。今の自分を評価でき、小さな行動を積み重ねることが将来につながります。悩みながらも行動することが、自分らしさを育てる力になります。
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先生情報 / 大学情報

帝京大学 文学部 心理学科 准教授 村上 香奈 先生
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