見えない海底活火山の活動を監視せよ!
日本の活火山
日本には2017年時点で111もの活火山が認定されており、そのうちの約1割は海底火山です。活火山は、活動状態によってABCの3段階にランク分けされています。しかし、誰も監視できていない海底火山はランク分けの対象外です。海底とはいえ、大海原にポツンとあるだけではなく、陸地に近いものも、船舶の航路に近いものもあります。例えば、鹿児島湾の北側の海岸線は姶良カルデラと呼ばれ、約2万5千年前の巨大噴火の名残で、この噴火による火砕流は鹿児島県全域に及びました。それほどの火山が今も海底で活火山若尊(わかみこ)として活動をしていながら、陸上の火山のようには監視がされていません。
火山ガスの測定
火山活動のモニタリングでは通常、地震、山体の膨張などの地殻変動、火山ガス、放熱量を観測します。この中で、噴火の直前に大きな変化をみせる火山ガスは、海底火山でも観測が可能です。観測では、船から海底火山直上で採水や採泥などを行います。採水器で深度ごとの海水を採取し、採泥器で海底面から40cm程度の円柱形の泥を採取します。得られた試料の二酸化炭素などの化学成分などを調べる観測を継続的に行っていけば、活動が活発になる変調をとらえられます。実際に、2015年に桜島で大きな噴火が予測されたときは、マグマの供給源が桜島と同じである若尊の水中の二酸化炭素放出量が急増しました。
平常時の監視の必要性
また、海底の放熱量も船から調査できます。槍状の測定器を海底に突き刺し、槍の数カ所に取り付けられた温度計で深度ごとの温度を測ります。通常は深度と温度が比例してグラフが直線になりますが、流体をともなって熱が上がってきている場合には曲線になることがわかっています。また、直線の傾き(温度勾配)によりマグマだまりの深さや規模などの状態が推測できます。
このような物理観測は活動の変化が表れてから始めても、平常時のデータがなければ比べようがありません。火山と共に暮らす日本では、海底火山に関しても平常時からの監視が望まれます。
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先生情報 / 大学情報
東京海洋大学 海洋資源環境学部 海洋環境科学科 教授 山中 寿朗 先生
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