食事で健康を守る! 科学的根拠に基づいた「がんを防ぐ食事」とは

厳格な玄米菜食に取り組む患者の体内では何が!?
西洋医学に基づいた治療のほかに、食事療法に取り組むがん患者が増えているといわれていますが、食事療法は民間療法ととらえられており、学術的な研究は進んでいません。
海外には末期がん患者を対象に厳格な食事療法を行う国立病院が存在し、日本でもそのプログラムを取り入れた厳格な食事を自主的に実践する患者団体があります。所属する人の中には、進行がんや末期がんの症状が改善されたり、がんが寛解したりといった事例がみられます。そこで、これらの事例では何が起こっているのか、科学的に解明する研究が行われています。
がんを抑える新しいアミノ酸
この厳格な食事療法を実践している患者を対象として、食事の記録と、患者の血液や尿などの生化学的な検査が網羅的に行われました。その結果、普通食を摂る患者の血中で不検出だったある「アミノ酸」が、厳格な食事を続けている患者の血中および尿中に高い頻度・濃度で存在することがわかりました。このアミノ酸を培養がん細胞と正常細胞に添加する実験では、がん細胞だけに増殖抑制作用が認められました。
では、このアミノ酸はどこからやってくるのでしょうか。本研究では、腸内細菌がそれを作り出している可能性があると考えられています。また、食事療法を実践している患者の腸内細菌の調査では、いわゆる善玉菌を含む細菌の種類が多岐にわたり、血液中のアミノ酸濃度とも相関関係がみられました。
食事でがんや生活習慣病を抑える
別の研究により、このアミノ酸はミトコンドリアを活性化することで肥満や糖尿病を抑制する働きも持つことがわかりました。このアミノ酸が、がんに対して抑制的に働くメカニズムを明らかにするために、似た作用を持つポリフェノール類など既存の食品成分を使った研究も行われています。生活習慣病を抑える働きのある食品成分を用いて、食事やデザートに取り入れることで誰もが美味しく健康を目指せる食品の開発も進められています。
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共立女子大学 家政学部 食物栄養学科 教授 深津 佳世子 先生
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