動物の糞でストレス測定! 科学で実現する動物福祉

動物の本当の気持ちとは
動物福祉とは、動物が自然な行動を取れてストレスなく過ごせる環境を整えることです。これまでは、ストレスを調べるために血液を採る必要がありましたが、針を刺すことでかえってストレスを与えることもありました。ライオンやトラのような動物では危険も伴い、現実的ではありません。そこで注目されているのが、動物を傷つけずに調べる「非侵襲(ひしんしゅう)的評価法」です。ストレスに関係するホルモン(コルチゾール)は血液だけでなく、糞(ふん)や毛にも表れます。毛にはストレスの「履歴」が残るため、長期間の状態もわかります。掃除の際に自然に集められるため、哺乳類から爬虫(はちゅう)類まで、幅広い動物に使える方法です。
真の満足度を測る
ただし、動物をストレスの少ない状態にするだけでは十分ではありません。人と同じように、動物にも満足感や幸福感があることがわかってきました。そこで注目されているのが「幸せホルモン」と呼ばれるオキシトシンです。これは親子の絆や仲間とのつながりが強まるときに出るホルモンで、動物の「本当の満足度」を知る手がかりになります。例えば牛にヨーグルトのような生きた菌(プロバイオティクス)を1カ月与えると、ストレスホルモンが減り、オキシトシンが増えることがわかっています。これはストレスが減っただけでなく、満足度も高まっていることを意味しています。
認証制度で変わる食の未来
動物福祉の考え方は、すでに社会で活用され始めています。動物福祉に配慮した農場には国や団体による認証制度があり、そこで育てられた動物の食肉などには専用のマークが付けられています。海外では、そのマークを見て、消費者が商品を選べる仕組みもあります。また、獣医師や動物看護師をめざす人が学ぶ内容にも動物福祉が必修として取り入れられました。それを学んだ動物看護師の活躍の場も、農場や動物園などに広がっており、科学に基づいた動物福祉の考え方は、社会全体に広がりつつあります。
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酪農学園大学 獣医学群 獣医保健看護学類 教授 林 英明 先生
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