イヌにやさしいがん治療法が、人間の治療法も変える?

イヌとネコとヒトのためのがん治療薬
イヌやネコも人間と同じようにがんになります。イヌやネコのがんには人間と共通する特徴が多く、アメリカの国立衛生研究所では、動物のがんを人間のがんのモデルとして研究する「比較腫瘍学プログラム」が進められています。言葉を持たない動物たちは、人間のように納得して治療を受けてはくれないため、体に負担の少ない治療法が必要です。そして、動物たちにとって負担の少ない治療法が開発できれば、人間にも応用できる可能性があります。働きながらがんと戦う人間たちにも、すべての哺乳類にも、やさしい治療ができるようになるでしょう。
腸内細菌にアプローチしてがんを治す
腸内細菌もがんに関与するため、腸内細菌にアプローチした治療法の研究も進んでいます。無味無臭の生分解性プラスチックの一種は、口から摂取すれば腸まで安定して届きます。この生分解性プラスチックは腸内で細菌により分解されて、酢に似た物質ができます。これが腸内細菌をサポートして炎症を抑え、糖尿病や腸炎、がんに効果があることがわかってきました。これをペットフードと一緒に食べさせれば、動物たちに負担なく、がんを治療できるようになるかもしれません。さらに、人間用のサプリメントや治療薬への応用も期待できます。
放射線治療が心臓に及ぼす影響
がんの治療法の発達で、がんは治らない病気ではなくなりました。治療法の一つに、がん細胞に放射線を照射してダメージを与える放射線療法があります。しかし、放射線治療を受けた乳がん患者のうち、左側にがんがあった人は15年くらい後に心臓の病気を発症するケースが多いことがわかりました。広島と長崎の被爆者にも心臓病で亡くなった方が多くいます。これらのことから、放射線が心臓の老化に大きな影響を与えていると考えられます。そこで、がんを克服した方が別の病気で命を落とさずに済む未来をめざして、放射線と老化の関係を明らかにする研究が進行中です。
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麻布大学 獣医学部 獣医学科 講師 永根 大幹 先生
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