道端に潜む意外な危険とは? スポーツを起点に町を見直す

道端に潜む意外な危険とは? スポーツを起点に町を見直す

伴走者に求められる力

障害のある人とない人が共に楽しむスポーツは「アダプテッドスポーツ」と呼ばれています。例えばブラインドマラソンでは、視覚障害のある走者が、障害のない伴走者とペアで参加する場合があります。走者と伴走者が1本のロープを片側ずつ持って走るのが特徴で、伴走者は走る方向や障害物の有無を伝えてサポートします。そのため走者との信頼関係を築くだけでなく、あらかじめコース周辺の状況を把握し、視覚障害者が抱く不安などを理解することが求められます。サポートの質を高められるよう、視覚障害者の空間のとらえ方を探る研究が始まりました。

視覚障害者が感じる危険

北海道ではブラインドマラソンの走者に協力してもらい、障害のない人と共に町歩きをするフィールドワークが行われています。さまざまな時間帯や曜日、季節で実施し、危険が潜んでいる箇所や、視覚障害のある人が移動中に手がかりにしているものなどを探るのです。すると、人や車、除雪された雪が積まれたところ、道端に停められた自転車などが危険だとわかりました。これらは事前に予測することが難しいため、突然現れたり消えたりする障害物としてとらえられています。
一方で道路や建物のように固定的なものは、危険度が比較的低いです。特に飲食店から漂う料理の香りは、現在地を知る手がかりになっていました。ただし町の再開発などで道や建物の配置が劇的に変わると、現在地がわからなくなり困ってしまう傾向が見られます。

視覚障害への関心を広めるために

視覚障害のある人が移動中に重視している部分がわかれば、伴走者がそれを気にかけやすくなります。また、伴走者に限らず多くの人に視覚障害者の視点を広めることで、まちづくりに生かしたり、危険を避けるような行動につなげたりできるでしょう。そうした関心を持ってもらうきっかけとして期待されているのがアダプテッドスポーツです。練習や大会をさまざまな場所で行い、選手の存在を知ってもらうことも求められています。

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東海大学 国際文化学部 地域創造学科 准教授 植田 俊 先生

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物事を見る視点は一つではありません。特に「他者との関わり」は、私たちのその視点や価値観、情報の取捨選択のあり方に影響を与えることがあります。例えば、家族と話すときと友だちと話すときでは、同じ話題でも理解の仕方や、やり取りの中身が変わってくるでしょう。世の中に存在する関係の数だけ、多様な物事の理解が成り立ちます。私が専門にしている社会学は、人々の関係性から成り立つ社会を深掘りできる分野です。幅広い視点を実感でき、自分と他者との関係を見つめ直す面白さも味わえると思うので、一緒に学んでみませんか。

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