「身体」には、知恵が備わっている

「身体」には、知恵が備わっている

意識と無意識の層構造

アスリートにメンタルトレーニングは欠かせませんが、このメンタルとは、試合前に緊張する、結果が出ると嬉しいといった「合理的理解」が可能な意識を指すことが多いです。しかし人間には自然に出てくるイメージやおおよそコントロールできない夢の体験もあり、これも意識の一部です。便宜的に、合理的理解ができる意識を通常意識、自然に出てくる類いのものをイメージとして意識を層構造的に捉える考え方もあります。さらにはその下に「無意識」があります。無意識には、合理的意識では捉えられない、何か大切なものを含んでいると考えられています。それをイメージや生きられた身体を介して意識化することで、アスリートとしてはもちろん、一人の人間としての大きさ、豊かさを磨くことにつながっていくとされています。

カウンセリングを通して身体の声を聴く

自分自身がまだ見いだしていない「新しい可能性」に気づくための心理サポートという実践があり、それに関する研究が進められています。創造的対話が展開されるカウンセリングによって、アスリートと専門家が協働して新しい可能性を発見します。実践事例から仮説を立てて、理論構築を目指します。この実践を「身体の声を聴く」と表現する研究者もおり、それは身体に宿る「知恵を探す」ことのようにたとえることもできます。

未来の自分を見いだす

アスリート=競技スポーツの強者というイメージがありますが、彼らも人であることに変わりはありません。彼らもまた社会を構成する役割を担っており、その中での「自分のありよう」をつくっていく必要があります。カウンセリングでは競技生活に関わるさまざまなことを語ることで、自分の生きてきた歴史を振り返りつつ、未来の自分を見いだしていくことに役立てていきます。これはアスリートではない人にも応用ができ、社会の中である意味戦っていくための力になるのです。この研究から得られた成果は、広い意味で「自分を育てる」ことにもつながっていくと予想されます。

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先生情報 / 大学情報

東海大学 体育学部 競技スポーツ学科 教授 武田 大輔 先生

東海大学 体育学部 競技スポーツ学科 教授 武田 大輔 先生

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臨床・応用スポーツ心理学、スポーツ科学

メッセージ

タイパ、コスパなどを重視して、無駄なくスマートに生きようとしなくても大丈夫です。無理なこと、むちゃなことに自ら向き合うことで、自然と心が鍛えられていくからです。今の若者はメンタルが弱いなどと言われることもありますが、そんなことはないでしょう。まったくの夢物語と思うことにも思い切って挑戦していけば、あなた自身も知らなかったあなたの可能性が活性化します。その過程で不安になるのは自然なことです。それは、今までの自分のやり方を修正していこうと心が訴えているサインだからです。

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