予期せぬ災害に備えて、これからの消防のあるべき姿とは?

予期せぬ災害に備えて、これからの消防のあるべき姿とは?

消火や救助だけではない

「消防」といえば、消防隊やレスキュー隊による消火活動や救助活動が一般的ですが、安全を守る業務はほかにも数多くあります。例えばビルなどを建築するときには、消火活動をしやすくする、燃え広がりを防ぐといった消防の視点で、設計段階から関わっています。また被害を最小限にするために、地域住民への防災訓練の指導のほか、商業施設の従業員に対する自衛消防訓練なども行っています。大規模災害が起こると消防機関だけでは対応できないため、自治体や警察、自衛隊とどのように連携するのかを日頃から考えることも大切な業務です。

自治体単位で組織化されている消防本部

都道府県ごとに組織されている警察とは異なり、消防は市区町村といった自治体ごとに組織されているため、全国に約720の消防本部があり、規模や組織体制もそれぞれ異なります。高齢化に伴う救急件数の増加や、異常気象などによる大規模な自然災害、頻発する地震への対応は、全国の消防本部で共通する課題です。また、大都市では再開発などによって防火対象物が増加するなど、消防行政需要が高まっています。その一方で、労働人口が減少しており、将来は消防の人手が不足するなど組織的な課題も抱えています。

社会環境の大きな変化のなかで

災害が起こったときに真っ先に現場に駆け付け、地域住民の命や財産を守ることを使命にしている消防機関は、地元に根づいた組織です。しかし社会環境の変化に伴い、100人以下の小規模な消防本部だけでは対応が難しい災害も想定されるため、複数の消防本部が組織を統合するといった「消防の広域化」も少しずつ進められています。組織力を生かした活動で地域の安全を守り続けるためには、広域化をどの範囲で行うかなどを含めて、今後の消防組織のあり方を考えていくことが必要です。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

拓殖大学 政経学部 社会安全学科 教授 川田 進 先生

拓殖大学 政経学部 社会安全学科 教授 川田 進 先生

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消防行政、社会安全学、行政学

メッセージ

私は消防機関に36年間勤めましたが、高校時代は消防の仕事をめざそうとは全く思っていませんでした。2つの大学に行き、いろいろな人との出会いのなかで、そのときにしかできないことをたくさん経験した結果、今の道につながりました。学生時代の経験に無駄なことは1つもなかったと思います。何か課題に直面したときにも、それまでの苦労や体験があるからこそ乗り越えられることもあります。人生経験という意味でも、今しかできないことにたくさん触れてみてください。

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