犯罪が起こりにくい社会の形成を、心理学から考える

犯罪が起こりにくい社会の形成を、心理学から考える

犯罪心理学とは?

「犯罪心理学」というと、「なぜ、犯人はあんなひどいことをしたのか」という、犯罪の動機や心理を扱うものと受け取られがちです。そうした犯罪者の心理については、犯罪心理学の「犯罪原因論」という分野で扱いますが、ほかにも捜査や防犯、裁判など、大きく8つの分野の心理学に分かれます。
特別に見えるこの分野にも、心理学の基礎がしっかり生かされています。例えば、「人は場所が変わっても行動パターンは変わらない」という基本は、犯罪捜査のプロファイリング(犯罪の犯人像の分析技法)などに生きています。また、「なぜ人は相手を攻撃するのか」、「なぜ1人だとできないことが複数だとできるのか」といった日常的な人の行動心理は、罪を犯した理由や分析のヒントになります。一般社会でも、問題となった飲食店での迷惑行動の動画について、当事者や動画を拡散し当事者を追及する人々の行為を考えるうえでの助けにもなります。犯罪に至る人の心理は、決して特別ではないのです。

なぜ再び罪を犯すのか?

日本の犯罪件数は、平成14年をピークに減少傾向です。しかし再犯率は増加しています。原因は、出所後に再就職できないこと、義務教育が不十分なために日常生活に支障があって更生を妨げていることなどが挙げられます。本人の努力ではどうにもならない場合、大切なのは地域をはじめとした周囲のケアです。しかし「なんとかしなくては」と思っても、いざ自分事になると皆尻込みしがちです。このギャップをどう埋めるかを考えなければなりません。

未然防止につなげる

犯罪者の人格を問題にする「犯罪原因論」に対し、今は「犯罪は環境によって引き起こされる」という「犯罪機会論」が主流です。例えば、犯罪が起こりやすい場所には、防犯カメラをつけるだけでも犯罪件数は減ります。環境を変えることで、悪いことをしたくてもできなくなり、根本的な防犯につながります。犯罪が起こりにくい社会は、まず私たちが犯罪という社会問題に関心を持つことから始まるのです。

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関西国際大学 心理学部 心理学科 准教授 板山 昂 先生

関西国際大学 心理学部 心理学科 准教授 板山 昂 先生

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犯罪心理学、心理学

先生が目指すSDGs

メッセージ

悩みを悩みではなくするのが心理学です。なぜなら心理学は、人間の心を客観的に見る方法を教えてくれるからです。例えばケンカした時、心理学ですでに見いだされている行動パターンに当てはめれば、「あの時ああ言われたから、衝動的に反応したが、こう対応すればよかったのだ」と冷静にとらえることができ、解決策も考えられるでしょう。そして、心がない人はおらず、心が働かない場面・行動もありません。心理学は、誰にとっても身近で、何より人生をよりよく生きるために有効で、実用的な学問なのです。

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