母子手帳から読み解く発達のサイン

発見が遅れるケース
自閉スペクトラム症やADHDといった発達障害は、重度の場合1~2歳の間に発見されることが一般的です。診断が下りればさまざまな支援を受けることができ、学校では特別支援学級で専門的な教育を受けられます。
一方で軽度の場合、あるいは知的障害が伴わない場合は、発見が遅れる傾向にあります。学校では一般のクラスに入り、そこで周囲と同じように行動できない、うまくコミュニケーションが取れないといった問題が生じることがあります。診断が下りていないために周囲の理解を得ることが難しく、時には「努力や自覚が足りない」と責められることもあります。
母子手帳の活用
こうした期間が長いほど、本人がつらい経験を重ねることになるため、なるべく早期に発達障害を発見する仕組みが必要です。その方法の一つに、母子健康手帳(母子手帳)の活用が挙げられます。母子手帳には、子どもの発達の様子を記録する「保護者の記録」という欄があります。ある研究で発達障害と診断された人の記録を分析したところ、ほとんどの人が2歳の時に2つ以上の単語をつなげて話せなかったことがわかりました。また、3歳の時点で自分の名前が言えなかった人は、言えた人よりも現状の社会的スキルが高いことがわかりましたが、これは子どもの発達の遅れを知った保護者が、療育に力を入れた結果だと考えられます。
作業療法士の役割
発達障害を支援する職種の一つが作業療法士です。さまざまな作業・リハビリテーションを通して患者の機能回復を図ることがその役割であり、発達障害の児童に対しては、遊びを加えた作業を通して、運動能力や社会的スキルを高めていきます。
作業療法の現場には、発達障害であるという診断が下りていないことで、さまざまな困難を抱える子どもやその保護者が数多く訪れます。母子手帳を活用した研究はまだ始まったばかりですが、発達障害を早期に発見する手段が確立できれば、より適切な介入もより早期に行えるようになるため、今後の研究の発展が期待されます。
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健康科学大学 健康科学部 リハビリテーション学科 作業療法学コース 助教 渡辺 俊太郎 先生
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