心理学で組織の課題を解決する 「組織行動論」のチカラ

心理学で組織の課題を解決する 「組織行動論」のチカラ

ヒトの心に寄り添っているか

多くの組織では、悪意はなくても人の心理的側面を軽視したマネジメントが行われがちです。例えば「給料を上げれば社員は頑張る」と単純に考えがちですが、実際の人の心は一律ではなく、状況によっては金銭報酬だけではやる気がでないことも多いのです。こうした人の心の機微を理解せずに組織運営をすると、施策を講じても効果を発揮しません。このような失敗を防ぐためには、心理学の知見を活用して「なぜ組織のパフォーマンスが上がらないのか」という問題の本質を探り、効果的な解決策を実施することが必要です。これを研究するのが、経営学の一分野に位置付けられている「組織行動論」です。

ビジネスの常識を覆す研究成果

心理学の研究結果はビジネスの常識を覆すことが少なくありません。例えば、仕事中にぼーっとすることは一般的には良くないと思われていますが、実はクリエイティビティは注意散漫な状態でこそ生まれることが科学的に証明されています。有名な「ダイソン」のサイクロン掃除機も、創業者が全く別のものを作っている時に偶然思いついたアイデアから生まれました。また、コミュ力のある上司がいる職場の方がクリエティブなアイデアがどんどん生まれそうに感じられますが、そのようなタイプは人の話を聞かない傾向があるため、実は内向的な上司の方が部下から創造的なアイデアを引き出せるという事実も明らかになっています。

組織の「病気」を診断し治療するための学問

こうした心理学研究の成果を活用して組織の課題を解決するためには、まず「真の課題は何か」を見極めなければなりません。医師が患者の病気を診断するように、「症状」から「病気」を特定して、適切な「治療法」を考えるのです。例えば、若手社員の離職や活気のなさという「症状」に対して、「最近の若者は●●だから」と決めつけるのではなく、調査を通じて真の原因を探り、状況に合わせた解決策を提案できるようになる。それこそが組織行動論の重要な役割なのです。

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先生情報 / 大学情報

武蔵野大学 経営学部 経営学科 准教授 宍戸 拓人 先生

武蔵野大学 経営学部 経営学科 准教授 宍戸 拓人 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

経営組織論、組織行動論、組織心理学

先生が目指すSDGs

メッセージ

心理学に興味があるなら、「何のために」心理学を使いたいのかを、必ず考えてみてください。もし「人のやる気を高めたい」「組織のパフォーマンスを上げたい」「効果的な販売方法を知りたい」といったビジネスへの応用に関心があるなら、心理学部よりも経営学部の方が合っているかもしれません。特に組織行動論などの心理学を応用した分野を教える教員がいる経営学部であれば、理論だけでなく実践的な知識も学べます。自分の「心理学への興味」がどこに向かっているのかを意識して進路を選ぶことをお勧めします。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
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武蔵野大学に関心を持ったあなたは

2024年に100周年を迎えた武蔵野大学は、同年4月、ウェルビーイング学部ウェルビーイング学科を新設しました。2023年4月には、社会と環境をデザインし実現する、文理融合型の「サステナビリティ学科」を開設し、近年では、起業家精神を育成する「アントレプレナーシップ学科」や私立大学初の「データサイエンス学科」を新設。常に時代の変化を先取りし、13学部21学科の文・理・医療・情報系の総合大学へと発展・拡大を続けています。