動く地面の正体は? 液状化現象の謎に迫る

液状化の謎が明らかに
地震による被害の一つに「液状化現象」があります。今では広く知られていますが、1964年の新潟地震当時は、その正体は解明されていませんでした。信濃川の両岸が川の中心に大きく移動し、駅のホームが流れ出すなど深刻な被害が発生しましたが、原因は砂丘の地すべりと考えられていました。1980年代になって航空写真を用いた調査が進み、地盤が最大10m以上動いていたことも明らかになりました。しかもその動きは、地震の揺れが収まった後も続いていたのです。この現象は「側方流動」と名付けられ、液状化に伴う地盤の横方向の大きな変形として認識されるようになりました。
液状化地盤は液体ではない?
液状化した地盤は、本当に液体のように動き続けるのでしょうか。完全な液体なら、地面は平らになるまでずっと流れ続けるはずです。しかし実際の被害を見ると、動きは途中で止まっています。液状化した地盤が「液体なのか、固体なのか」という議論が1990年代に活発になり、さまざまな実験が行われました。その結果、液状化した地盤は完全な液体ではなく、ごくわずかに強度を保った「非常に柔らかい固体」だと突き止められました。その強度は通常の約1/1000程度と小さいものの、完全に流れてしまわずに形をとどめるのです。
液状化被害を減らすために
研究の積み重ねにより、液状化した地盤の強度を数値的に評価して、側方流動の量を予測する手法が確立されました。地盤が動かないのか、1m動くのか、10m動くのか、といったおおまかな予測も重要です。現場で使いやすいよう計算方法をあえて簡素化したことで、実務への普及が急速に進みました。将来的には、液状化マップに加えて、地盤の動きを示す「流動マップ」の作成・公開が期待されています。こうした土木の新しい技術は、誰もが公平に、その恩恵を受けとれることが大切です。土木工学は、そこに暮らす多くの人の「安全」と「幸せ」の最大公約数を見つけ出すことを使命としています。
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関東学院大学 理工学部 理工学科 土木・都市防災コース 教授 規矩 大義 先生
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