児童手当創設の複雑な経緯 制度創設の歴史から読み取れること

児童手当はどう始まった?
「児童手当」は、次代の社会を担う子どもの健やかな成長を支援する目的で子育て家庭に支給されるものです。日本でこの制度が創設されたのは1971年のことで、それまでは存在しませんでした。その創設経緯は、子育て支援への純粋な思いだけではありませんでした。
当時、ILO(国際労働機関)の社会保障に関する条約を批准し、国際社会のスタンダードに追いつくために、児童手当の創設が求められていました。また、国に先んじて一部の自治体が独自の手当を支給し、市民の支持を集めていました。そういった内外の事情が重なった結果、制度化への動きが加速したのです。
誰が財源を負担する?
そもそも所得の再分配を目的とする現金給付の制度は、理論的に、国が財源を負担すべきとされています。地方が負担すると、自治体ごとに差が生じてしまうからです。ところが現実の児童手当は、国と地方が財源を分担する構造となっています。その背景には、制度創設時の中央省庁間の駆け引きがありました。
社会保障制度を拡充したい厚生省(現厚生労働省)、国の負担増を避けたい大蔵省(現財務省)、地方の負担増を避けたい自治省(現総務省)。自治体が先行して支給し始めた実績を口実に、大蔵省が「地方も財源を負担すべき」と主張するなど、3省庁間で駆け引きが行われた結果、理論からかけ離れた「割り勘」構造が妥協の結果として生まれ、それが今日まで引き継がれてきたのです。
過去を知り、未来を変える
児童手当がなぜ現在の不合理な構造になったのか、歴史をひも解いてみるとよく理解できます。複雑な経緯で生まれた割り勘構造は、理論的に見れば本来あるべき姿ではありません。だとすれば、現在の制度を変える余地は十分にあるはずです。実際、近年では、マイナンバー制度の普及などもあり、国が直接給付を行う仕組みも可能となっています。
過去の経過を丹念に調べることによって、現在の制度の成り立ちを知ることができます。歴史から、今後のよりよい改革への道筋を学ぶことができるのです。
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東海大学 政治経済学部 政治学科 講師 原田 悠希 先生
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