音楽がつなぐ心の架け橋

音楽がつなぐ心の架け橋

音楽は異文化理解の入口

世界の音楽は、実にさまざまです。音階なら「ドレミファソラシド」を思い浮かべますが、例えばインド音階は「サリガマパダニサ」。今の日本では当たり前となっている「ドレミ~」や五線譜は、明治時代以降に取り入れられた新しい文化です。実際に、日本の尺八や箏(こと)の譜面は漢字で縦書きです。
「音楽は世界の共通語」のようでありながら、そうでない場合も多いと言えます。このことを理解した上で世界の多様な音楽を見聞きすると、その音楽が生まれた背景やその人たちの価値観などを知ることができるでしょう。

「できた!」が生まれる共生の授業

多文化共生が進む日本にとって、スペインの音楽教育から学べる点がたくさんあります。移民が多いスペインでは、学校にさまざまな文化的背景の子どもたちが集まります。言葉が通じず、孤立しがちな子どもたちも、音楽の時間だけは、最初からクラスの仲間と一緒に過ごせる場合が多いのです。音楽の楽しさには、人と人を結び、学びを深める不思議な力があります。言葉や文化の違いを超えて子どもたちの「できた!」を引き出す音楽の授業は、これからの教育を支える大切な力になるでしょう。

偏見をなくす「第2の言語」

日本では合唱や器楽合奏に強みがありますが、スペインでは身体表現や即興的な活動が豊かです。簡単な動作だけで、文化や言語の壁を超えた一体感が生まれます。鏡のように向き合って体を動かしているうちに、子どもたちが自然と笑い合うようになり、見た目の違いへの偏見も次第に薄れていきます。さらに、子どもたちのルーツ国(スペインの場合では、例えばエクアドルやルーマニアなど)の音楽や踊りを授業に取り上げると、文化的に孤立しがちだった子どもたちが自信を取り戻していきいきと輝き始めます。クラス全員で異なる文化を楽しむ経験は、「受け入れられている」という安心感を育み、クラス全体の関係性を良い方向へと導きます。音楽は、他者とのつながりや自己肯定感を育てる力を秘めているのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

信州大学 教育学部 音楽教育コース 准教授 桐原 礼 先生

信州大学 教育学部 音楽教育コース 准教授 桐原 礼 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

音楽教育学、異文化間教育学

先生が目指すSDGs

メッセージ

私は大学時代、インドとネパールに一人旅をしたり、スペインに留学したりして、全く違う音楽世界に衝撃を受けました。海外に出かけて、「百聞は一見にしかず」の体験をしてください。音楽文化の多様性を知ると同時に、自文化や日本文化とは何か、自分が世界の中のどのような立ち位置にいるのかが見えてくるでしょう。
また、あなたの理想とする学校教育とはどのようなものでしょうか? 具体的にイメージするために、海外の教育事情がヒントになることがあります。これからの学校や授業はどうあったら良いか、考えてみましょう。

先生への質問

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信州大学は、人文・教育・経法・理学・医学・工学・農学・繊維の8学部からなり、すべての学部に大学院が設置されています。教員は約1千人、在学生数は約1万1千人で、世界各国からの留学生約400人も意欲的に学んでいます。
松本、長野、上田、伊那に位置するいずれのキャンパスも、美しい山々に囲まれ、恵まれた自然のもと、勉学にも、人間形成の場としても、またスポーツを楽しむにも最適の環境にあります。さらに、地域との連携がきわめて良好であり、地域に根ざした大学としての特色も発揮しています。