なぜ植物は栄養状態がよくなると、葉っぱが増えるのか?

植物の生存戦略を支える幹細胞
人間はたくさん栄養を取ったからといって、臓器や手足などの器官(特定の機能を持った部分)が増えたりはしません。一方、植物は栄養状態や環境に合わせて葉や花、根など必要な器官を柔軟に増やして、バランスの取れた最適な体を作り出せます。
これは、動物と違って動けない植物が、動物とは異なる生存戦略を持っているからです。そのカギは、さまざまな種類の細胞に分化できる幹細胞の仕組みにあります。近年、その詳しい仕組みがわかってきました。
成長を促す「サイトカイニン」
植物の幹細胞は主に茎や根の先端などにあり、必要に応じて新しい葉や根に分化します。それを制御するのが「サイトカイニン」という植物ホルモンです。サイトカイニンは地上部の成長を促し、逆に根の成長を抑制する作用があります。
サイトカイニンは、根から吸収した窒素栄養の量がシグナルとなって、主に根で合成され、道管や篩管を通って体全体に運ばれます。
体の形をコントロールする仕組み
さらに最近の研究では、葉を増やし、成長させる仕組みが解明されました。
「tZ」という種類のサイトカイニンが、茎の先端の幹細胞とその周りの細胞の働きを促すことが知られています。tZになる前の前駆体「tZR」も同時に道管で運ばれますが、茎の最先端に到達できるのはtZRのみで、tZはその手前でブロックされます。tZRはそこでtZに変化して、幹細胞とその周りの細胞の働きを活性化し、最終的に葉への分化を促すのです。栄養の増加に応答して量が増えるのはtZRなので、栄養が増えると葉の枚数が増えるようにコントロールされます。一方、道管で運ばれるtZは、葉の大きさの維持に関わっていました。このように「植物に養分を与えるとよく育つ」という当たり前に思われる現象の裏では、さまざまな遺伝子や分子が緻密に働いていることが明らかになりました。
こうした植物が体を作る仕組みの解明は、将来的に農作物の効率的な育成にも役立つ可能性があり、農業に貢献すると期待されています。
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