近世インドで見られた、東洋と西洋の異文化交流の特徴とは?

近世インドで見られた、東洋と西洋の異文化交流の特徴とは?

東西交流の要所

16世紀から18世紀頃、近世インドの港町にはアジアの商人はもちろん、東インド会社などヨーロッパの商人たちも数多く訪れました。海を通じたユーラシア大陸の東西の異文化交流が本格的に見られるようになった、歴史的に重要な時期・場所といえます。実際にどのような交流が行われていたのかを調べると、言語や価値観の異なる人々がさまざまな摩擦を乗り越えていった過程が見えてきます。

通行証をめぐる対立

例えば、航海の許可証である「通航証」をめぐって、ヨーロッパの人々とインドの人々との間で対立が起きました。通航証はヨーロッパの商人が貿易の管理あるいは独占を目指して導入したものです。訪問できる港と運んでもいい商品が定められ、その規則に従うことを約束すれば、通航証が発行されました。しかし通航証と引き換えに関税を支払う必要があったこともあり、反発する商人もいました。なかには取締り対象となる危険を冒して、通航証を取得せずに航海に臨んだ商人もいました。また、インドの商人が当時インドの大半を治めていたムガル朝に訴え、同制度を改善するようヨーロッパの人々に圧力をかけてもらうということも見られました。

交流を続けるための妥協

こうした対立の傍ら、妥協点を探る努力もありました。互いに貿易が阻害されることは望んでいなかったからです。例えばオランダ東インド会社はインドの商人がムガル朝を通して要求を伝えてくると、ムガル朝の不興を買ってまで反対しようとはしませんでした。同社はムガル朝の高官と贈り物を交換し合うなど、良好な関係を築こうとしていた様子もうかがえます。
このように近世インドの歴史を見ると、ヨーロッパの人々の主張は当然、全てが受け入れられたわけではありません。一方、19世紀以降に作られた国際法は西洋中心の価値観が色濃く、20世紀以降に発展した国々には不公平な点もあります。アジアの人々もより対等に渡り合っていた近世インドの事例をヒントに、西洋中心の価値観を乗り越えた、公正な規範を構築する方法を摸索しています。

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滋賀大学 経済学部 総合経済学科 准教授 嘉藤 慎作 先生

滋賀大学 経済学部 総合経済学科 准教授 嘉藤 慎作 先生

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経済史

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タイパやコスパが重視される時代ではありますが、時間をぜいたくに使うことを恐れないでほしいです。私が取り組んでいる研究では、史料をたくさん読んでも発見が得られないこともあります。しかし情報を集めてつなぎ合わせ、新たな価値を見いだしていく力が得られます。この力は研究だけでなく、膨大な情報に流されずに進路を見極めるためにも必要です。大学の授業や研究を通して、時間や労力を惜しまず考える姿勢、根拠となる知識、そしてあなたなりの価値観を磨いてみませんか。

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