剥がれないけど剝がしやすい? 半導体製造を支える「離型技術」

「きれいに剥がす」がポイント
プラスチック製品は、熱で溶かした材料を金属でできた型(金型)に流し込み、冷やして固めて形を作ります。しかし、成形がうまくいっても、型からきれいに取り出せなければ、せっかくの製品が壊れたり、不良品になったりしてしまいます。例えばたい焼きを焼いたときに、うまく型から外れずに形が崩れてしまったり欠けてしまったりするのと似たようなことが、工場の製造現場でも起こるのです。そのため、金型から製品をスムーズに取り出す「離型」という工程がとても重要です。
くっつくけど剝がしやすい
半導体部品を保護する黒いプラスチックカバーは、剥がれにくく、熱を加えても変形しないことが必要です。そのため接着力が高く、一度固まると二度と溶けないプラスチックが使われています。それ故に、接着力が高く、強力に金型にもくっつくため、うまく金型から外すのが難しいのです。これを解決するために、金型の表面を梨の皮のようにザラザラに加工したり、コーティングを施したりといった工夫が行われています。ただし、コーティングは薄くて摩耗しやすく、離型性と耐久性の両立が課題となっています。
専用装置で理想の金型表面を探る
そこで、小型の実験装置が開発されました。この装置では、小さな金属片の表面にさまざまな処理を施して金型表面を再現した試験片を用意し、溶かしたプラスチックを上から流し込みます。圧縮してプラスチックを固めた後、どれだけの力で試験片表面から剥がれるかを測定します。プラスチック材料、金型表面の凹凸の状態、コーティングの種類などを変えて剥がれる力の測定を繰り返し、よりよい離型性能を実現できる組み合わせを見つけるために研究が続けられています。
ものづくりの現場では、離型のような一見小さなことが製品の品質や生産性を大きく左右します。日本の製造業が強く、半導体製造装置においても日本の製品が世界で高いシェアを誇っているのは、技術力の高さが生かされているからです。離型性向上のような小さな工夫が大きな力になるのです。
参考資料
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崇城大学工学部 機械工学科 教授北田 良二 先生
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