光の常識を覆す! フェムト秒レーザーで拓くナノ加工の最前線

光の力で模様を描く
現代のテクノロジーは小型化・高性能化が進んでいます。これは、用途の拡大だけではなく、資源やエネルギーの有効活用のためでもあります。小型化・高性能化の要となるのが、材料をナノレベルで加工する微細加工技術です。この分野で「フェムト秒レーザー」と呼ばれる超短パルスレーザーが注目されています。1千兆分の1秒というごく短い時間だけ光るこのレーザーを使うと、固体表面に波長よりも短い周期の微細な構造を形成できます。しかも、その構造の形は、レーザーの「偏光」によってしま模様や水玉模様など多彩に変化します。光と材料との相互作用で、ナノスケールの模様を描けるのです。
形成の鍵を握るのは?
通常、光は波長よりも小さな点に絞ることはできないはずですが、フェムト秒レーザーを当てると、その常識が覆されます。波長よりも小さい構造が生まれる仕組みは、完全には解明されていませんが、鍵を握っているのは、レーザー照射によって材料表面に現れる「プラズマ状態」です。このプラズマ状態が、波長よりも小さい周期構造を形成すると考えられています。しかし、まだ説明できない現象も多く、レーザーの条件や材料の物性など、未知のパラメーターの影響が検討されています。
制御と応用へ向けた挑戦
この現象を技術として応用するには、どんな材料にどんな条件でレーザー光を照射すると、どのような構造ができるのかを正確に理解して、制御できることが必要です。現在は、レーザー照射により変化する材料を段階的に観察するなど、地道な実験を重ねて仕組みの解明が進められています。また周期や形状だけでなく、結晶状態に注目する研究も行われており、加工後の結晶状態を把握することも重要なテーマです。
今後、構造の形成メカニズムが明らかになり、自在に微細加工ができるようになれば、ナノスケール、さらにはアトスケールの新しいものづくり技術として期待されます。
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