AIが速くなる! 専用ハードウエアで省電力も実現

AIが速くなる! 専用ハードウエアで省電力も実現

AIの消費電力問題を解決

生成AIに代表されるAI技術が急速に発展していますが、実はAIは通常の検索処理の10倍もの電力を消費します。そこで、単に性能が良いだけではなく、消費電力を抑えて環境保全にも貢献できるAI技術が求められています。その実現方法の一つが、AIアルゴリズムを専用のハードウエア(電子回路)として実装することです。ハードウエア化することで処理速度が向上すると同時に、電力消費も大幅に削減できます。例えば「自己組織化マップ(SOM)」というAIアルゴリズムをハードウエア化した結果、通常のパソコンで14分近くかかる処理が、わずか2秒弱に短縮されました。同時に大幅な省電力も実現しています。

肝となる回路設計

複雑なアルゴリズムをハードウエア化する際には、工夫が必要です。そのとき要となるのは、半導体デバイス層とアプリケーション層をつなぐ回路設計技術です。例えば、SOMで使われるガウス関数という複雑な関数は、そのままではハードウエア実装が困難です。しかし、ステップ関数というシンプルな関数にノイズを加えると近似的に再現できることがわかり、ハードウエア化が実現しました。ガウス関数は多様な分野で使われているため、この近似化技術の応用によって、幅広い領域でアルゴリズムのハードウエア化が進むことが期待できます。

わかりやすいAI

SOMは、あらかじめ分類方法を教えなくても、入力されたデータを自動的にグループ分けするという特徴があります。構造が非常にシンプルで、どのように分類が行われたかを目で見て確認できる利点があり、「説明可能なAI」としても注目されています。最新の深層学習と比べると、認識精度では劣ることもありますが、その単純さゆえに、ハードウエア化がしやすいという強みを持っています。専用ハードウエアを活用して、画像や文字の認識、手の形や動きの認識などのアプリケーションが開発されており、省電力で扱いやすいAIとして、期待が寄せられています。

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先生情報 / 大学情報

関西大学 システム理工学部 グリーンエレクトロニクス工学科(仮称・設置構想中 ※2026年4月開設予定) 教授 肥川 宏臣 先生

関西大学システム理工学部 グリーンエレクトロニクス工学科(仮称・設置構想中 ※2026年4月開設予定) 教授肥川 宏臣 先生

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電子工学、ソフトコンピューティング

メッセージ

まず、好奇心を持ってください。「なんで?」「不思議だな」と思う気持ちが、人間の原動力です。そして、勉強をしっかりしましょう。「積分なんて使わないから勉強しても意味がない」とよく言われますが、勉強は筋トレと同じで、取り組むことで脳の性能が上がるのです。国語でも数学でも世界史でも、脳を鍛えるために勉強しましょう。どこでその鍛えられた能力が役に立つかはわかりませんが、受験や就職という目的に限定せず、脳が若いうちに鍛えておく方が将来のためになります。

関西大学に関心を持ったあなたは

1886年、「関西法律学校」として開学した関西大学。商都・大阪に立地する大学らしく、学理と実際との調和を意味する「学の実化」を教育理念に掲げています。千里山キャンパスの北東2.2kmに、新たな学びのフィールドとして「吹田みらいキャンパス」が誕生しました。キャンパス内の施設は、2025年4月開設のビジネスデータサイエンス学部の学舎をはじめ、国際学生寮、グラウンドなどを配置予定。企業・自治体との連携だけでなく、留学生との交流、体育会クラブの活動など多様な人が集い学び合う活気に溢れる環境を創出します。