教え方と学び方を科学する「インストラクショナルデザイン」

より良い授業を「設計」する
たとえば、授業をより良くするためには、「どこをめざすか」「どうすればそこへ行けるか」「到達したとどう判断するか」という3つの問いに明確に答える必要があります。
こうした考え方は「インストラクショナルデザイン」と呼ばれ、教育現場で教え方を理論的に設計するための学問分野です。学習者の多様化やICTの進化が急速に進む今、授業の質を高めるには従来の経験に頼るだけでなく、理論に基づいた設計が欠かせません。
「やる気」も設計する
学習意欲は、要因を分析して対策すれば、高めることができます。そのための代表的な理論が「ARCSモデル」です。これは、学習意欲の状態を「注意が引かれているか(Attention)」「自分に関係があると感じられるか(Relevance)」「やればできそうだと思えるか(Confidence)」「やってよかったと感じられるか(Satisfaction)」という4つの要因に基づいて分析する枠組みです。
教員が生徒のやる気を引き出す場面だけでなく、生徒自身が自分の状態を振り返るために使うこともできます。さらに、このモデルを学習させた生成AIを使って、意欲を高めるためのアドバイスを得る、といったICTと組み合わせた応用も始まっています。
教員も学ぶ
大学教員の多くは、ある領域の専門家であり、自分の経験に基づいて授業を行っている場合があります。そこで、教員を「授業設計を学ぶ」という場面での「学習者」と位置づけて、教員を対象とした授業づくり研修の設計を研究する、という取り組みがあります。
1つの工夫として、教員の授業に対する考え方や経験の状況に基づいて、それぞれに合った支援の方法を提案することで、研修の受け入れやすさと効果を高めることを狙います。
こうした取り組みにより、「学べたかどうか」を基準とした授業の実現や、学びの機会の拡大が実現されることが期待できます。教える側も「学び続ける」という姿勢が、あなたの「学び」を支えていくのです。
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関西国際大学社会学部 社会学科 准教授中嶌 康二 先生
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