キーワードは「葉酸」! 母親の栄養状態が子どもに与える影響

戦後に提唱された概念
第2次大戦中の飢餓を生き延びた妊婦から生まれた子どもの多くは、大人になって生活習慣病を高頻度で発症していたという調査結果が戦後になって報告されました。その後の研究で、妊娠中の母親の栄養状態が、生まれてきた子どもの疾患リスクに大きく影響するという「DOHaD(ドーハッド)」学説が提唱され、妊娠を希望する女性や妊婦の栄養状態が子どもに与える影響について、調査・研究が行われるようになりました。葉酸や脂肪酸など、栄養素に着目した研究もその1つです。
葉酸不足が胎児に与える影響
ビタミンの一種である葉酸は必須栄養素です。特に妊婦が不足すると、胎児に「神経管閉鎖障害」という先天性奇形を発症するリスクが高まるため、食事に加えて 1日400㎍の摂取が必要とされており、サプリメントの使用も推奨されています。しかし胎児の神経は、妊娠が判明する6~7週目頃までにほぼ形成されるため、妊娠前から継続的に摂取することが望まれています。
葉酸サプリメントを4カ月間飲み続ければ十分な数値まで改善することがわかっていますが、同じように葉酸を摂取しても、体内での利用効率が悪く血液中の葉酸値が上がりにくい人もいます。これは遺伝子のわずかな違いが影響しており、「遺伝子多型」と呼ばれています。今後はこうした遺伝子情報も考慮して、より一人一人に合った栄養指導が期待されています。
プレコンセプションケアでも
アメリカでは1998年より穀類への葉酸強化が義務付けられました。強化小麦が販売され、神経管閉鎖障害の罹患(りかん)率が劇的に下がったという実績があります。一方、日本では母子手帳に記載されるなど葉酸の重要性が周知され、近年は妊娠初期の女性の約6割が葉酸サプリを摂取するようになりました。しかし母子手帳を受け取る前の女性に対する情報は不足しています。妊娠に関する正しい知識を身に付けて健康管理を促すプレコンセプションケアの取組みが進む中で、葉酸に関する情報は特に重要な要素として位置づけられています。
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日本栄養大学 ※2026年4月から共学化&名称変更 現校名:女子栄養大学 栄養学部 実践栄養学科 基礎栄養学研究室 講師 庄司 久美子 先生
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