認知症の人と介護する家族の双方を支える看護

介護者の約半数が介護負担感を強く感じている
高齢者の増加に伴い、認知症の人は年々増えています。そんな中、必要とされているのは、認知症の人だけでなくその介護者に対する支援です。在宅で認知症の人を介護している家族は、精神的・身体的・社会的な面で多くの苦悩を抱えています。
ある調査では、認知症の行動・心理症状に悩んで精神科を受診した家族約130名のうち、半数近くが「介護うつ」に近いレベルの強い介護負担感を感じていることが明らかになりました。具体的には、認知症の人の攻撃的な態度、夜間の問題行動、聴覚機能の低下などが、介護者の負担感に大きく影響していることがわかってきました。
介護負担感の強さが不適切な対応につながる
また、別の調査からは、認知症の症状に「怒りっぽい」「イライラしやすい」「食欲・食行動に異常が見られる」といった特徴があると、介護者の不適切な対応につながりやすいことがわかりました。この調査では、約49%に「不適切な対応がある」という結果が示されています。その内容は、怒鳴る、叫ぶ、厳しい口調で話す、「施設に入れるよ」と言うなどです。体を揺さぶる、たたくなど、暴力的な行動に至っていたケースも少数ながら確認されました。
介護者への早期支援が大切
不適切な対応を防ぎ、認知症の人や介護者の苦しさを和らげるためには、できるだけ早い段階で医療機関などの支援を受けられるようにすることが重要です。認知症の症状によっては、薬物治療で改善が期待できる場合もあります。一方、介護者に対して認知症の症状や接し方についての理解を深める啓発を行うことで、介護の負担感を軽減できる可能性もあります。認知症の人がイライラしている原因を、介護者と医療従事者が一緒に考えて改善策を講じた結果、症状改善につながり状態が落ち着いた事例も報告されています。
認知症医療の現場では、このようなアドバイスを提供できて、認知症の人と介護者の双方に寄り添った適切な支援が行える人材の育成が急務となっています。
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