有機エレクトロニクスでペラペラの電子デバイスを作る

身近な有機分子を電子デバイスへ応用
ほんの数十年前まで、有機材料は電気を通さない絶縁体だと考えられていました。ところが近年、電気を流すと光る有機分子や、逆に光を当てると発電する有機分子が見つかり、電気を流せる有機材料が作られるようになりました。有機分子を電子デバイスに応用する分野が「有機エレクトロニクス」で、スマホの有機ELディスプレイをはじめトランジスタや太陽電池など、有機分子は様々なところに使われています。こうした有機分子は特別なものではなく、例えばトウガラシのカプサイシンやコーヒーのカフェ酸なども電子デバイスに利用されています。
有機薄膜で体温から電気を作り出す
有機材料は薄さや柔らかさが特徴です。これを生かし、肌に貼りつけて違和感なく心拍数や血圧などを計測するヘルスケアデバイスの開発が進められています。
ヘルスケアデバイスの電源には太陽電池のほか、体温と外気温の差で発電する熱電変換を使います。熱電変換の発電量は温度差が大きいほど多くなるだけでなく、材料の電気伝導度に比例し、熱伝導度に反比例するという特徴があります。例えば金属の鉄は電気伝導度が高いものの、熱伝導度も高いので効果が相殺されてしまいます。これに対し有機の高分子材料は、分子の並ぶ向きによって電気伝導度と熱伝導度が変化するので、発電量が大きくなるように電気伝導度・熱伝導度をコントロールできると期待されます。
有機分子の個性の組み合わせは無限
ヘルスケアデバイスのディスプレイには、色が変わるという個性を持った有機分子を用いる「エレクトロクロミック」を活用することが検討されています。これは、表示を切り替えるときだけ電圧をかけ、着色状態を変化させて表示を切り替えます。その後、電圧をかけなくても表示状態を維持できます。有機ELは画像を表示する間ずっと電流を流す必要がありますが、エレクトロクロミックであればより少ない電力で済みます。様々な有機分子の個性を調べ、補完し合うことでより優れたデバイスの開発が可能になるはずです。
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先生情報 / 大学情報

九州産業大学 理工学部 機械電気創造工学科 講師 貞方 敦雄 先生
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