社会の変化に合わせた、居心地のよい建築空間をつくる

働きやすいオフィスとは
共働き世帯の増加や、オフィスワークとテレワークを組み合わせたハイブリッドワークの拡大など、人々の生活や働き方は変化しています。こうした社会の変化に合わせて、建築空間も人々がストレスなく健康に過ごせるように進化していく必要があります。
例えば、従来のオフィスはなるべく多くの従業員を一つの空間に集めて、無駄な面積を減らし、均等な環境が公平で良いと考えていました。ところがコロナ禍をきっかけにオフィスのあり方が見直され、自分らしく働くことの重要さが議論されるようになりました。労働環境とストレスについての大規模なアンケート調査では、過密なオフィスでは人間関係のストレスが高いことがわかりました。また、一人の方が集中できたり、逆に人とつながりがあった方が仕事もはかどったりと、人によって働きやすい環境が違うことがわかりました。こうした結果から、各自が働きやすい場所を選べるような環境づくりが提言されています。
最適な在宅ワークの環境づくり
住宅の役割も変わりつつあります。かつて住宅は主に家事や育児、また休息の場所でしたが、いまや働く場所にもなっています。夫と妻のどちらもが在宅で働く場合、男性が書斎や寝室などの個室を使い、女性はリビングやダイニングで仕事をするというのが世界的な傾向です。女性が家事や育児と仕事を同時に進めるには効率的かもしれませんが、仕事に集中できないという課題もあり、働きやすい住宅の環境づくりが模索されています。
多様な人々の視点を建築計画に
性別差を考慮して新しい価値をつくり出す「ジェンダード・イノベーション」の研究も行われています。例えば「起業家」は、男性に比べて女性は圧倒的に少ない状況です。調査の結果、起業支援の施設が都市部のオフィス街に集中していることが一因であることがわかり、いま女性が利用しやすい住宅街にも支援施設が作られています。このように、建築や都市の計画にはさまざまな人の声を取り入れることが必要なのです。
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お茶の水女子大学 共創工学部 人間環境工学科 教授 長澤 夏子 先生
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