図書館にカフェ? 変わりゆく公共建築とまちの未来

変わりゆく公共建築のかたち
「公共建築」とは、役所、学校、病院、図書館のように、社会の誰もが利用する目的で造られた建物のことです。これまで公共建築は、例えば図書館は図書館の機能だけ、病院は病院の機能だけと、それぞれの役割がはっきりと分かれていました。しかし最近では、こうした公共建築が大きく変化しており、図書館にカフェや市民交流スペースが併設され、病院と市役所が一体となった施設が造られています。こうした動きは、少子高齢化や過疎化を見据え、駅周辺に公共施設を集める「コンパクトシティ」という考え方とも関係しています。
建築に求められる新しい力
一つの建築が複合的な用途を担うことで、建築の形そのものも大きく変わりつつあります。図書館も、単に本を読むためだけの空間ではなく、訪れる人がワクワクするような体験を提供できる場として進化しています。つまり、現代の公共建築には、建物の美しさや機能に加えて、地域を元気にし、人々が集まりたくなる仕掛けも求められているのです。さらに、公共建築でありながら、民間が運営を担うケースも増えており、こうした運営の在り方もデザインの一部だと考えられます。これからの公共建築には「まちづくり」や「地域活性化」といった視点が欠かせないため、設計者は単なる形のデザイン技術だけでなく、さまざまな分野の知識を身につけることが求められるでしょう。
公共でも私的でもない「コモン」の空間
建築の世界では、公共の空間を「パブリックスペース」、個人の空間を「プライベートスペース」と呼びます。しかし最近は、その中間にある「コモンスペース」と呼ばれる空間が注目されています。例えば、誰でも使えるけれど民間企業が管理している商業施設などがその一つです。コモンスペースは、パブリックとプライベートの良さを融合させ、多くの人が心地よく過ごせる場をめざすものです。こうした新しい空間のあり方を考えてデザインしていくことが、これからの建築に求められています。
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関東学院大学 建築・環境学部 教授 柳澤 潤 先生
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