合唱を支えるもう一つの主役 アンサンブルとしてのピアノ伴奏

合唱を支えるもう一つの主役 アンサンブルとしてのピアノ伴奏

共演者としての伴奏

合唱コンクールでは、生徒たちの中からピアノ伴奏者が選ばれることがよくあります。その際、伴奏者は「裏方」として捉えられがちですが、実際には演奏の印象や歌いやすさを大きく左右する重要な役割を担っています。そのため、伴奏者は自分のパートを正確に演奏するだけでなく、歌の旋律や楽曲の構成を理解して、どのように歌を支えるべきか考える必要があります。伴奏とは、合唱と一体になって音楽をつくり上げる「共演者」としての演奏なのです。

アンサンブルでの工夫

ピアノは、声楽やさまざまな楽器とのアンサンブルに広く用いられる楽器です。相手によって求められる演奏が異なるため、柔軟な対応力が求められます。例えば、バイオリンとの共演では速いパッセージに対応する反応力が必要です。一方、声楽との共演では、呼吸や歌詞の流れをくみ取った演奏が求められます。また、弦楽器でも種類により音質や音量が異なるため、同じ強弱記号でも音色や響きのバランスを考慮して表現することが重要です。さらに演奏の仕方だけでなく、ピアノの屋根の開け方によっても音の響き方が変化するため、共演する楽器や会場の環境に応じて微調整する必要があります。このように、アンサンブルには技術だけでなく、細やかな工夫が求められるのです。

音楽を共につくり出す

アンサンブルの最大の魅力は、一人では生み出せない音楽を共につくり上げるところにあります。相手の表現に応じて自分の演奏を調整したり、自らの表現が相手に影響を与えたりするなど、演奏を通じたやりとりは会話と同じです。合唱コンクールの練習でも、伴奏者と歌い手が意見を交換しながら表現を工夫することで、より豊かな音楽が生まれるでしょう。ただ指示通りに演奏するのではなく、自分たちの感性を重ねて音楽を創造していくという意識こそが、魅力ある演奏を生み出します。アンサンブルを通じて得られるこうした経験は、音楽の本質を深く理解し、表現力を広げていく上で、大きな力となるはずです。

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先生情報 / 大学情報

玉川大学 芸術学部 音楽学科 教授 松川 儒 先生

玉川大学 芸術学部 音楽学科 教授 松川 儒 先生

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歌曲伴奏法、芸術学

先生が目指すSDGs

メッセージ

高校時代の私は、実は映画監督をめざしていて、映画ばかり見ていました。大学に入ってからはオペラに夢中になり、気になるものを手当たり次第に追いかけていました。今、思うのは、興味のあることをとことん追求する「オタク精神」は、必ず自分の力になるということです。もし、やりたいことがまだ見つかっていないなら、まずは何でも試してみることが大切です。知らないことをそのまま避けるのではなく、体験してから語ってみましょう。世界は、見てみた分だけ大きく広がるのです。

玉川大学に関心を持ったあなたは

―8学部17学科がワンキャンパスに集まる総合大学!―「全人教育」の理念のもと“「人」を育てる”ことをめざす玉川大学は、8学部17学科の学生がワンキャンパスで学んでいます。61万㎡の広大な敷地には、各学科での深い学びに加え、学部学科の垣根を越えた学びの環境を用意。学外での体験型学修や、「使える英語力」を身につける「ELFプログラム」などの独自プログラムも実施しています。また、2020年4月に利用開始した「STREAM Hall 2019」では、農・工・芸術学部が学部の枠を越えた学びを展開します。