一度は消えた路面電車が未来の街をつくる

一度は消えた路面電車が未来の街をつくる

路面電車が再び街を走る

明治時代の半ば、京都で初めて開業した路面電車は、当時の重要な交通インフラとして全国に広まりました。そして戦後、自動車が普及すると、路面電車は渋滞の原因とみなされ、多くの都市で姿を消しました。ところが近年になって、路面電車は「LRT(次世代型路面電車)」として国内外で再評価されています。例えばフランスのストラスブールでは、1960年代に廃止された路面電車が1994年に再び導入されました。日本でも2023年に、宇都宮市で新たなLRTが開業しています。背景にあるのは、交通渋滞の緩和、環境負荷の軽減、高齢者の移動手段確保など、現代社会が抱える多様な課題です。

車の街からの脱却

車社会の進展により、郊外に大型ショッピングモールが建てられ、一方で街中の商店街ではシャッターを下ろす店が増えました。しかし近年、郊外のショッピングモールにも空き店舗が増えています。その要因は、高齢化や人口減少といった社会構造の変化です。こうした中で公共交通を中心に、歩いて暮らせる街を再構築する「コンパクトシティ」が注目されています。その要となる交通手段として期待されているのがLRTです。3mほどの幅があれば敷設でき、既存の道路を活用することも可能で、建設費は地下鉄の約10分の1と、導入のハードルが低いのが特徴です。効率的な移動手段を確保しながら、持続可能なまちづくりを実現する鍵となっています。

歩いて楽しめる街をつくる

LRTは、人々が「歩いて回る」街の仕組みづくりと一体になってこそ、本来の効果を発揮します。例えば、ストラスブールではLRT導入に合わせて中心部への自動車の流入を制限し、歩行者がゆったりと街を楽しめる空間が整備されました。このように、移動手段を車から公共交通と徒歩にシフトさせることは、街のにぎわいを生み出す大切な工夫です。高齢化や人口減少が進む中、LRTを活用したまちづくりには、人の動きや暮らし方にまで目を向ける視点が必要とされています。

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先生情報 / 大学情報

広島工業大学 工学部 環境土木工学科 教授 伊藤 雅 先生

広島工業大学 工学部 環境土木工学科 教授 伊藤 雅 先生

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土木工学、都市工学

先生が目指すSDGs

メッセージ

まちづくりは、時代や人々の暮らしに合わせて、常に姿を変えていく仕事です。街の景色が少しずつ変わり、新しい魅力が生まれていくプロセスに自分が関われることは、大きなやりがいになるはずです。将来、あなたが社会に出たときにも、まちづくりはずっと必要とされ続ける分野です。まずは、通学や買い物のときに歩いている街を少し意識して見てみましょう。身近な場所にも、魅力や改善のヒントがきっと隠れています。街をより良く変えていく面白さを、ぜひ感じてみてください。

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広島⼯業⼤学は、2025年4月に《情報》 《建築・建設》 《生命・環境》の3つの領域で新しい学びに取り組む12の学科・コースに再編。DX、GXなど、ビジネスや社会の変⾰に不可⽋な⾰新的な技術の学びや新しいことに“挑戦”できる機会を充実させ、新たな価値を創造することができる「未来創造力」を磨く新しい教育プログラム「HIT.E-ACTION」を実施しています。さらに、ものづくりの拠点である"Hiroshima Making Hub"が誕生。学生のアイデアを大きく広げる環境も整備しています。