絶食状態でワンオペ? 子育てに見る女王アリの生態

アリの子育て方法は2種類
「地球はアリの惑星」といわれるほどアリは種類が多く、世界には約1万4000種ものアリが生息し、日本だけでも300種がいます。女王アリは空中で交尾を終えた後、巣を作って卵を生み、孵った幼虫を働きアリとして育てます。その子育ての仕方には2種類あります。一つは女王アリが巣の外で狩りを行い、子どもの餌を獲ってくる原始的な様式、もう一つは女王アリが自ら絶食状態でワンオペ育児を行うという、進化した様式です。アリ全体の約9割がこの進化した様式で子育てするといわれますが、絶食状態の女王アリは、子どもの餌を獲ってくることなく、どうやって子育てをしているのでしょうか。
口から吐き戻した液体が餌に
女王アリが液体を口から吐き戻していることは以前からわかっていましたが、子どもの餌として使われているかどうかを確かめた人はいませんでした。しかし昨今の研究の結果、絶食で子育てする女王アリは、口から吐き戻した液体を子育てに使っているという証拠が得られてきました。またその液体は、女王アリの体の構造が変化して食道が膨れ、そこにためられることもわかっています。液体の成分や、それが作られる仕組みについて、今後研究が進められていきます。
世界でも希少な女王アリ誕生例も
アリの生活史は非常に多様で、研究テーマの宝庫です。その一つに、日本各地で採集したアリを飼育し、観察や解剖、分子生物学実験やゲノム解析など様々な方法を用いて多角的に検証している研究があります。種によっては、特定の地域のみで女王アリの形や行動が異なることもあります。また働きアリの働き方や女王アリの子育ても、それぞれに共通性や多様性があります。中には、交尾をしていないヒメアギトアリの女王アリが、未受精のまま産卵し、働きアリを生産するという、驚くような現象も見られています。これは雌性単為生殖と呼ばれる現象で、世界で23例目の報告でした。このようにアリをはじめとする生き物については、実物から学ぶことでより一層興味や理解が深まります。
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