靴への工夫でパフォーマンス向上! これも義肢装具の技術

靴への工夫でパフォーマンス向上! これも義肢装具の技術

人間工学を駆使して日常生活を改善

義肢装具と聞くと、手足を失った人が使う義手や義足をイメージする人は多いでしょう。しかしそれだけではなく、足の痛みや外傷などが生じたときに、治療や症状改善を目的として装着する医療器具も含まれます。例えば、治療用の靴やインソール(中敷)などもそうです。解剖学や運動学、医学といった視点から足の状態を検証し、どのような装具が最適かを追求します。これはヒトとモノを科学する、人間工学の分野です。この技術はスポーツや日常シーンでフル活用できます。

医療技術をスポーツに活用

医療技術はスポーツパフォーマンスの向上にも有効です。例えば、あるバレーボール選手で、ネット際のジャンプが、わずかに右に傾く人がいました。足を計測すると、右足と左足の長さが数ミリ違うことがわかり、かかとに長さを補足するためのインソールを入れました。すると、まっすぐ飛べて、ジャンプの高さが2~3センチも伸びたのです。
もちろん、体の使い方や寸法、筋肉、柔軟性などを総合的に検証して対処方法を判断します。装具を用いることで、けがの治療や予防、リハビリも含めたスポーツ医療で広く関わることができます。

ファッション性と快適さの両立

多くの女性は足の問題を抱えています。仕事やおしゃれでパンプスを履くため、荷重がつま先に集中して外反母趾(ぼし)やタコが生じたりします。おしゃれな身だしなみが求められつつ、過酷な環境で仕事をしている代表格が客室乗務員です。パンプスのデザインは変えずに、義肢装具の技術によるインソールを内蔵し、さらに靴の内部に調整機能を加えた結果、足の疲れを防止し安定性のあるパンプスの開発に成功しています。
ほかにも、見た目重視で量販される靴から選ぶため、足に合わないことや、足腰が弱った高齢者に合う靴が見つからないといった問題もあります。そうした課題をインソールなどで解決できるのが義肢装具士です。医療やスポーツ、多くの人のQOL向上も含めて、義肢装具士の活躍の場は広がっています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

新潟医療福祉大学 リハビリテーション学部 義肢装具自立支援学科 教授 阿部 薫 先生

新潟医療福祉大学 リハビリテーション学部 義肢装具自立支援学科 教授 阿部 薫 先生

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靴医学、靴人間科学、下肢装具、歩行分析

メッセージ

義肢装具士は、国家資格の医療専門職です。有名なのは、パラリンピックで義手や義足を通じて選手を支えている人たちです。加えて、もっと身近な扁平足や外反母趾、高齢で歩きにくさを感じている人にも、治療用の靴やインソールを提供できます。一度、自分の足や靴をじっくり観察してみてください。靴の裏をみると、靴底の減り方が左右違うことがわかります。「なぜだろう?」と考えることがサイエンスの入り口です。身近な「なぜ」をたくさん見つけてください。興味があれば、一緒にそれを解き明かしていきましょう。

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6学部15学科すべての学科で国家資格をはじめとした専門資格の取得に対応したカリキュラムを配置しています。また、看護・医療・リハビリ・栄養・スポーツ・福祉の総合大学である利点を生かし、他学科の学生がチームを形成して学ぶ「連携教育」を導入し、関連職種への理解やコミュニケーション技法を身につけることで実践的な「チーム医療」を学びます。さらに、【スポーツ×リハビリ】【看護×福祉】など、学科コラボによる学びで、幅広い知識を修得します。