血を止めるだけじゃない! さまざまな機能を持つ血小板

止血の機能を担う血小板
小さな切り傷や擦り傷を作って血が出たとしても、健康な人なら、しばらくすれば自然に血は止まります。この止血の過程で重要な役割を担っているのが、血液成分の一つである「血小板」です。血小板は傷ができたという信号を受け取ると活性化し、血管の破れた部分に集まって傷をふさいで血を止めます。ところが近年の研究により、血小板には止血以外にもさまざまな機能があることがわかってきました。
血小板を悪用するがん細胞
きっかけとなったのはヘビの毒です。ヘビの毒には血小板を活性化させる働きがあり、その毒のタンパク質と結合する血小板の受容体「CLEC-2」が新たに発見されました。続いて、このCLEC-2に生体内で結合する化合物は、ポドプラニンという膜タンパク質であることがわかりました。
ある種のがん細胞は、ポドプラニンを膜に持ちます。がん細胞が血液中を流れていくとき、そのままでは免疫細胞に異物として認識され、攻撃されてしまいます。ところが、膜にあるポドプラニンに血小板が結合すると、それがカモフラージュとなり、免疫細胞の攻撃を回避できるのです。さらに血小板には血管の増殖を促す物質が入っているため、がん細胞が転移先の組織で血管を新たに作ることにも利用されています。こうしたがんの転移と血小板の関係を解明することで、新たな研究の発展が期待されます。
リンパ管の派生に関与
また、血小板は「個体」の発生過程にも深い関わりがあります。体の中には、体液を循環させる器官として動脈と静脈、リンパ管がありますが、リンパ管は静脈から分離して作られます。ところが、CLEC-2の遺伝子を壊したCLEC-2ノックアウトマウスの胎児は、静脈とリンパ管がうまく分離されません。このことから、リンパ管の内皮細胞にあるポドプラニンに血小板のCLEC-2が結合することが、分離の促進に必要であることが明らかになりました。
こうした血小板についての新たな知見を、臨床での治療につなげることを目標に、研究が進められています。
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先生情報 / 大学情報

国際医療福祉大学 保健医療学部 医学検査学科 教授 長田 誠 先生
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