希少な症例でも対応 PET検査の負担を減らすAI画像処理

希少な症例でも対応 PET検査の負担を減らすAI画像処理

体内の機能を測定するPET検査

病院での画像診断の一つに「PET検査」があります。放射線を出す薬を注射し、体内への薬の広がり方を画像で撮影する方法です。PETは、CT・MRIのように臓器の形を見るものではなく、注射した物質がどこに運ばれ、どのように代謝されているかといった臓器の機能を見るものです。例えば、がんがあるところにはブドウ糖がたくさん集まります。放射性のブドウ糖を注射して撮影すると、放射線量が高く表れている部分が写り、がんの位置が正確にわかるわけです。
しかし、安全な量とはいえ、患者や医師、介助者も放射線の被ばくのリスクがあります。また、場合によっては動脈からの採血が必要など、さまざまなリスクもあります。そこで、AIの画像処理で、この負担を減らそうという研究が行われています。

検査の負担を軽減するためのAI

動脈からの採血を行うことで、血液中の薬剤の量を測定でき、PET検査で撮影した画像と合わせてより正確な体内の機能を計測することができます。しかし検査中の長い時間、腕などを動かさずに固定する必要があり、患者にとって大きい負担になります。
そこで、PET画像から血液中の薬剤の量をAIで予測する研究が行われています。AIで血液中の薬の量を予測することができれば、動脈からの採血を省略でき、検査による患者への負担を大きく軽減できることが期待できます。

AIによる画像復元技術

PET検査の画像は、注射する薬剤の量が少ないと不鮮明になります。少ない薬剤で撮影した不鮮明な画像を鮮明にすることができれば、薬剤による被ばくを減らすことができ、AIによる画像復元技術が活用されています。
また、通常AIを作る際は大量のデータの学習が必要ですが、ディープイメージプライアー(deep image prior)という画像復元技術を使うと、データが少なくても、学習したのと同じように画像復元をすることができます。新しい薬剤を使った場合や、珍しい疾患に対する検査など、過去データが少ない検査にも使えるのです。

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秋田県立大学 システム科学技術学部 経営システム工学科 准教授 松原 佳亮 先生

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医用画像工学、医用システム、核医学

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メッセージ

私は医療画像処理の研究と共に、データサイエンス、AIリテラシーの教育にも力を入れています。データに基づいて正しい意思決定に結び付けるには、データを正しく解釈するための能力が必要です。生成AIを活用している人は多いと思いますが、AIの回答をうのみにすることは危険です。AIの仕組みや、調べるトピックについての知識を持っていなくてはなりません。また、調べた回答をどう生かして、何をしたいのか、それは人間でしか考えることはできません。AI技術とその使い方の両方を学べるのが、本学科の魅力です。

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