講義No.15495 児童学 教育

能力至上主義でいいのか? 「幸せ」を向上させる未来の家庭科教育

能力至上主義でいいのか? 「幸せ」を向上させる未来の家庭科教育

学力では測れない力

家庭科の授業の中で、夏の木に関するものを題材としたネームプレートづくりをしました。花や虫を題材にする生徒が多い中、ある生徒が「オーストラリアのサンタ」を作り、周りを驚かせました。サングラス姿でサーフィンをするサンタに笑顔が広がり、教室が明るくなりました。こうした授業では縫い方の技術だけでなく、発想や個性を認め合う空間が自然と生まれます。
従来の教育では「できなかったことができるようになる」ことに重点が置かれてきました。しかし、友達に教えて感謝された嬉しさや集中する楽しさ、新しい発見のワクワク感などの「学力では測れない力」も、将来幸せに生きるために大切でしょう。

「制約と余白」が生む自由な学び

最近の家庭科では、「制約と余白」という新しい考え方に基づく授業づくりが注目されています。制約とは最低限身につけるべき能力で、例えば裁縫ではなみ縫いの技能はそれに当たります。一方、余白とは生徒の発想や工夫が生かされる部分です。なみ縫いを前提に、何を作るかは生徒に委ねることで、予想もしない作品が生まれ、笑い合える学びの場が生まれます。
また、評価方法も変わろうとしています。テストや作品の点数だけでなく、自分の好きなことや得意なこと、他者との関わりを記録するポートフォリオを使った「生き方・在り方の振り返り」も注目されています。

多様な他者と学び合う授業

家庭科では、自立と協働の視点から「多様な他者と学び合う授業」が注目されています。例えば、地域の高齢者と一緒に学ぶ活動では、最初は「高齢者の方が教えてくれた」と書いていた生徒が、活動を重ねるうちに「●●さんが教えてくれた」と名前で語るようになります。高齢者という属性ではなく一人の人として関わるようになり、その人たちの多様な生き方や価値観に触れて、自らの「生き方・在り方」を深く考えます。
こうした豊かな学びを通じて、学力のみならず生徒の「幸せな状態」がどのように変容したのか診断する尺度の開発に関する研究も盛んにおこなわれています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

常葉大学 教育学部 学校教育課程 講師 二橋 拓哉 先生

常葉大学 教育学部 学校教育課程 講師 二橋 拓哉 先生

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家庭科教育

先生が目指すSDGs

メッセージ

あなたは「なぜ教員になりたいのか」「なるとしたらどのような授業を・学級をつくれる教員になりたいのか」「児童生徒にどうなってほしいのか」。これらは教職の道で根本的な3つの問いです。教員養成課程では、教育学に関するさまざまな学びを踏まえて、これらの問い何度も何度も考え直していきます。進路選択をする高校生のいまだからこそ、この3つの問いと向き合って後悔のない進路選択をしてください。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

常葉大学に関心を持ったあなたは

2013年4月、常葉学園大学・浜松大学・富士常葉大学の3大学を統合し、新たに法学部[法律学科]、健康科学部[看護学科・静岡理学療法学科]を加え10学部を擁する「常葉大学」が誕生しました。3大学を統合することにより、各大学が培ってきた教育成果を融合。スケールメリットや学部・学科の多様性を生かし、教育研究活動全体の質の向上を目指します。
「知徳兼備」「未来志向」「地域貢献」の3つを教育理念に掲げ、未来の国や社会のために真に広く貢献できる人材を育成します。