緊張しても実力発揮! 自分を知るだけで強くなる心理学

理想を追わず、自分らしく
スポーツが上達したくて上手な選手のまねをしたり、理想的なフォームや心理状態をめざす人がいますが、あまり有効ではありません。人間は、身体も性格も個性があって異なっているので、実力発揮に適した体の動きや心理状態は、一人一人違っています。例えば、陸上競技のウサイン・ボルト選手は、骨盤が曲がっているのですが、自分の体の特徴を生かしたフォームで世界記録を出しています。また、スポーツ種目や性格特性によって、冷静な方が良い場合も、興奮した方が良い場合もあります。自分の能力を発揮したければ、理想を追うよりも「自分を正しく知る」ことが重要なのです。
緊張した時こそ「今を知る」
試験や試合で緊張したとき、「リラックスした理想の状態」をつくろうとするのは逆効果です。一流選手は緊張を和らげるのではなく、「今どのくらい緊張しているか」を知ろうとします。国際競技大会などで本番に強い選手も、自分の現状を把握して、できる範囲で調整しているのです。
「現状把握」は、教育現場でも実際に効果が出ています。千葉県の中学校で朝10分間、生徒が心理状態を記録する取り組みを続けたところ、学校内のトラブルが減少しました。自分の状態を客観視できるようになった生徒たちは、他者への理解も深まり、自然に思いやりのある行動を取るようになったのです。
自分を理解するだけで
理想を追うのではなく、「現状を記録する」だけで自然に上達するという新しい考え方が注目されています。テストで50点を取ったとき、100点をめざすのではなく、「何がわかって何がわからないか」を理解するだけで、自然に60点、70点と向上するのです。ダイエットでも、毎朝体重を記録するだけで12キロ痩せた例があります。瞑想(めいそう)も同様で、心を理想の形にしようとするのではなく、毎日の体調や気分を認識するだけで、自分にとって一番心地よいコンディションに整っていきます。自分というセンサを正確に使えるようになることで、人生の質は大きく向上するのです。
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常葉大学 教育学部 心理教育学科 教授 坂入 洋右 先生
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